- shikiko7
【第2回】チャーター便実現のための前提条件

チャーター便を実現するのに必要な条件は様々です。複数の条件が同時に求められることもあれば、時にはひとつの条件のみで成立する可能性もあります。多様な評価・判断が交錯するその過程は、非常に複雑なものとなっています。今回は、その条件についてお話しします。

▲台湾桃園国際空港第二ターミナルビルの出発ロビー
条件1:十分な輸送力
「航空会社が十分な機材を有しており、定期便のほか、チャーター便にも機材を投入できること」。これがチャーター便運航のための最も基本的な条件と言えます。
まず定期便の運航に影響を与えないという前提があり、その上で航空会社は余剰輸送力を分配することができます。そして、その路線が有益かどうか、チャーター便の運航が可能かどうかなどについての検討に着手します。具体的には、空港の時間帯や滑走路、離着陸に適した地形かどうかなど、実際に運航する上での様々な条件について検討します。
まず定期便の運航に影響を与えないという前提があり、その上で航空会社は余剰輸送力を分配することができます。そして、その路線が有益かどうか、チャーター便の運航が可能かどうかなどについての検討に着手します。具体的には、空港の時間帯や滑走路、離着陸に適した地形かどうかなど、実際に運航する上での様々な条件について検討します。
例えば山形県は以前、積極的に台湾を訪問してチャーター便運航を実現すべく各航空会社に働きかけていました。しかし、山形空港は高い山に囲まれており、滑走路も比較的短いことから、機体幅が広めのエアバスA320を主力機とするタイガーエア台湾は、輸送重量を減らさないと(つまり乗客数を減らさないと)、スムーズな離着陸が確保できないことがわかりました。
また、任務を遂行できるパイロットの人数にも限りがありました。こうした状況では、航空券のコストを上げざるを得ないほか、パイロットのシフトに関しても調整が比較的難しくなります。そのため、タイガーエア台湾はチャーター便運航に興味を示しませんでしたが、これも非常に現実的な判断の結果であると言えます。

▲山形空港は地形や滑走路の状況から、タイガーエア台湾によるチャーター便は実現しなかったものの、2018年10月からチャイナエアラインによる定期チャーター便が継続して運航されている
条件2:航空会社の市場戦略と旅行会社の意欲
それぞれの航空機がパフォーマンスを最大限に発揮するため、航空会社による機材の使用計画は相当に慎重かつ綿密なものとなっており、それは同時に長期的な展望に基づいた布陣でもあります。
前回でも述べたように、航空会社は定期便化を見据えてチャーター便を運航するため、航空路線網や競合他社の状況に基づき、チャーター便の配置に着手します。台湾から日本へ向かう路線で見てみると、台湾人は日本人ほど、日本の国内線や新幹線の利用に慣れていないことから、訪日旅行では直行便であることが最高の競争力となり得ます。
また、台湾の航空会社は往々にして、旅行行程の策定及び便の競争力を考慮し、同一エリアにおける航空路線を密集させ、旅行の自由度を上げることがあります。
例えば、チャイナエアラインは九州南部において、鹿児島、宮崎路線を次々に就航させ、福岡路線と組み合わせることができるようにしました。
また、チャイナエアライン傘下のタイガーエア台湾が名古屋と小松に就航したことで、旅行業者は北陸パッケージツアーの造成がしやすくなっています。
チャイナエアライングループとしてのパワーを結集することで、様々な価格設定が可能となり、市場占有率を確保して、競合他社に対しての優位性を保っています。
こうした航空会社による路線配置計画は、旅行業界との提携により、さらに完全なものとなります。なぜなら、チャーター便を就航させるためには、「旅行業者が受託・販売に意欲を持つかどうかが必須条件」となるからです。その際、「価格が常に重要なカギ」となります。

▲往路と復路で異なる空港を利用したツアー行程例。ルート策定の自由度が上がり、多様な旅行商品の造成が可能になる
条件3:チャーター便の価格に競争力があるかどうか
台湾でよく使われることわざに、「首をはねる商売はする人がいるが、損をする商売をする人はいない(殺頭的生意有人做,賠錢的生意沒人做)」というものがあります。「金をもうけることができるなら、少しばかりのリスクなど何ということもない」という意味になります。
一般的な定期便と違い、旅行会社が航空会社からチャーター便業務を請け負う場合、まず市場ニーズや成長ポテンシャルがあるかどうかについて検討します。
しかし、チャーター便計画が本格的に始動するのは、価格交渉の段階に入ってからです。
チャーター便、一便一便についての費用を双方で決めた後、旅行会社は、前もってチャーター便の費用を航空会社に支払わなければなりません。
そしてその後のチャーター便業務が成功するかどうかに関しては、旅行会社が責任を全て負うことになります。そのため、「市場性と価格が旅行会社の参画意欲を決定づけるカギ」となります。
チャーター便の価格決定に際して、航空会社はそれぞれに独自の計算式を持っています。燃料代、乗員及び地上職員の人事コスト、各空港でかかる費用などを仔細に計算した上で、市場性を推量して収益性を見極めています。
つまり、市場ニーズが高いかどうか、旅行会社側がどのぐらいの利潤を見込んでいるかについての予測が必要となります。旅行会社と航空会社、双方による駆け引き、力比べが行われているのです。

▲航空会社は、綿密なコスト計算や市場性の予測等を通じてチャーター便の価格を設定している
条件4:その他の影響要素~誘因となる補助金
現在、日台間チャーター便路線についてよくみられる現象として、地方の自治体によるチャーター便補助金が挙げられます。さらには、チャーター便業務を請け負う旅行会社に対しても、様々な補助が行われています。
具体的には、航空会社に対して空港使用料を減免したり、旅行会社がチャーター便利用商品を造成した場合、ツアー参加客に対して1人当たり1,000~3,000円を支給する等の内容です。
こうした措置は航空会社の興味を引き付け、元々あった都市部への輸送力を地方に振り分けようとする意欲を高めます。
実際に、旅行会社は佐賀空港を利用することで、福岡空港が持つ機能を肩代わりさせています。茨城空港も、便・路線が密集しFITが強い東京の代わりをつとめています。ちなみに、長崎空港も補助金を通じて台湾の航空会社に働きかけているとのことで、2020年のチャーター便就航が有望視されています。
一般的に、台湾における海外旅行は、5日間ツアーが主流となっています。そのため、チャーター便は少なくとも週に2往復する必要があります。その後、就航都市の知名度が上がり、需要が増えた場合、便数も徐々に増加していきます。
タイガーエア台湾の佐賀路線を例に取ってみると、当初のチャーター便では1便180座席全てを五福旅行社が請け負い、独占販売していました。自治体は五福旅行社に対して、広告宣伝費用を助成し、佐賀関連商品のプロモーションをサポートしました。そして、十分な座席数が確保できたこと、同時に、これを全て販売しなければならないというプレッシャーに後押しされ、五福旅行社は佐賀空港チャーター便を利用した一連の商品を造成しました。「北九州5日間の旅」、「佐賀を深く味わう旅」、「九州南北を網羅した旅」といった様々な内容のものから、フリープランや自由行動を増やした半フリープランまで、多種多様な商品を企画・販売しました。価格も日本円にして約25,000~90,000円と幅広く、多くの台湾人旅行客を佐賀に送客することに成功しました。

▲五福旅行社佐賀特設ページより。同社がチャーター便の座席を独占販売していた台北―佐賀路線は、2018年10月に定期便化され、週2往復運航している
文:魏 苑玲(TTN台湾旅報)、翻訳·編集:JTアライアンス・インバウンド大学@台湾編集部