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タイガーエア台湾が創立5周年。その成長方程式S.C.O.R.Eとは
年末に店頭公開し、来年上場予定。台湾企業ならではの強みを活かして大きく飛躍

▲タイガーエア台湾商務部門の管理層が記念撮影。左より許致遠タイガーエア台湾経営発展処協理兼スポークスパーソン、王雅蓓付帯収入管理部マネージャー、羅徳業マーケティング及び広報部マネージャー、林巧琬マーケティングマネジメント処協理、張鴻鐘董事長、タイガーフーちゃん、黄世恵商務長、潘珍珠運航路線企画及び公共事務部副理、劉芯瑜CRMマネージャー、盧美恵営業販売部副理、洪尉剛営業収入管理部マネージャー
タイガーエア台湾が、創立5周年を迎えた。チャイナエアライングループの稼ぎ頭で、唯一の台湾資本LCC(格安航空会社)だ。2018年財務諸表によると、利益は10億台湾ドル余りで2年連続の黒字となり、EPS(1株当たり利益)は4.9元だった。今年末には店頭公開(6757)し、来年末に上場予定だ。
使用機材と運航路線では、リースを含むエアバスA320neoを15機導入し、2021年から順次就航させる。また来年は「台北―新潟」「台北―ソウル・仁川(インチョン)」線を開通する。
【タイガーエア台湾の強み】
就航地の多さ:就航都市数22都市、29路線
高い定時運航率:86.82%
搭乗と航空券購入面で高評価:運航情報検索、各月航空券価格の検索、多様な決済方法
台湾らしいサービス:「親切、熱意、まごころ」、台湾料理の機内食
平均機齢の若さ:4.2年
オープンジョーによる自由度の高い旅行が可能
費用対効果が高く、予算もフレキシブルに設定が可能

▲タイガーエア創立5周年を祝い、張鴻鐘董事長と社員らで記念撮影
タイガーエア台湾の張鴻鐘董事長は同社の黒字転換について、チャイナエアライングループ傘下に入った時が最も重要な節目だったと分析する。
チャイナエアライングループは2017年1月、タイガーエアウェイズ・ホールディングス(シンガポール)からタイガーエア台湾の株式10%を買い取り、完全子会社とした。また、張董事長は同社の独自方針である「S.C.O.R.E~成長の方程式」を挙げ、この方針の実行が同社を大きく成長させる要因となったと話している。
この「S.C.O.R.E~成長の方程式」とは、「内部統合によるサービスの効率及び品質の向上」と「積極的な対外宣伝によるブランド強化と現地化」に大きく分けることができるという。
1.内部統合によるサービスの効率と品質の向上
「System(システム)」
専用のウェブサイトを立ち上げ、幅広い層の消費者が利用しやすいシステムを構築した。さらにサイトの機能を強化し、各国の旅行者向けに多言語対応させた。また、予約システムも改善し、短時間のアクセス集中にも対応できるようにした。
「Channel(販売チャネル)」
従来型の旅行業者と提携して団体ツアーの販売を強化し、乗客を確保した。日本への定期便の多くがチャーター便から始まっており、チャーター便は団体ツアーが基盤となる。また、検索サイトやオンライン旅行社(OTA)とも提携し、インターネット上での販路を拡大して、露出と取引の機会についても増加させた。
「Organization(組織)」
チャイナエアラインによる株式取得をもって、外国籍のCEOやCCOとの契約を打ち切った。チャイナエアライン側が派遣した専任董事長のもと、台湾市場の開拓を進めたほか、組織を再構築して優秀な人材を招聘した。
「Route(運航路線)」
運航路線を調整し、日本14路線、韓国3路線で定期便を運航しており、台湾の航空会社としては日本便、韓国便が最多となっている。また、台北・台中・高雄3都市からのマカオ便運航により、台湾市場におけるLCCのトップブランドとなった。
「Extra(付帯商品とサービス)」
マーケティング活動と多言語(中・英・日・韓・タイ)のSNSを連携させ、付帯商品とサービスを強化した。また2017年に創設した会員制のtigerclubは、2年間で累積50万人を超える会員を獲得した。100台湾ドルの消費につき1台湾ドル相当のポイント還元というおトクな引換方式を会員に提供している。
2.積極的な対外宣伝によるブランド強化と現地化
・日本、韓国、マカオ、タイ、フィリピンにGSA(販売総代理店)があり、広告とマーケティングの現地化に合わせて、タイガーエア台湾ブランドを積極的に宣伝し、現地の人々の好みにより近づけた。 ・台湾だけでなく、海外拠点におけるマーケティングと宣伝に関しても、公式サイトの多言語ページと公式SNSで同時に発表している。
・各地の代表的な旅行博に積極的に参加し、タイガーエア台湾ブランドの浸透を図っている。
・各国の自治体や観光局、空港運営会社と緊密に連携して、共同でタイガーエア台湾及びその就航地のサービスを宣伝した。
・阪神甲子園球場をメイン会場とする「台湾デー」や、5年目に突入した「tigerrun」イベントなど、異業種間での提携を確立して、ウィンウィンに結び付けた。
来年はソウル、新潟へ就航予定。飛行時間3~4時間以内の都市も就航を検討
台湾の航空会社は現在6社あり、これから新規参入する会社もある。タイガーエア台湾は台湾唯一のLCCだが、海外のLCCも25社が台湾に就航している。台湾の空港施設の容量と使用可能な時間帯は非常に限られており、今後競争の激化が予想される。
タイガーエア台湾の強みは、日本14か所、韓国3か所に定期便が就航しており、台湾の航空会社では両国への便数が最も多い点にあるといえる。同社は今後も親会社であるチャイナエアライングループと緊密に連携し、グループとしての相乗効果と機材購入を通じて、最大の利益を目指すとしている。
今年の上半期を見ると、運輸権のうち「第5の自由」と「第6の自由」の拡大などに伴い、台湾に進出する海外LCCが増えたことから、シェア争いが激化している。また、台湾で行われる選挙と中台情勢も旅行客の出足に影響しているようだ。
タイガーエア台湾の昨年の純利益は9億8,000万台湾ドルだった。今年の目標は毎月黒字を維持し、年度目標を達成し続けることだという。張董事長によれば、現在の航空機稼働率は高く、新機材が導入されるまでは、運航業績と市場の状況に合わせて調整するのみということだが、目の隈便を増便することで、稼働率を十分に維持できるとしている。また就航を予定しているソウルと新潟以外の都市についても、台湾からの飛行距離が3~4時間以内で、台湾人からの人気が高いのであれば、いずれも就航の検討対象だという。
目標は団体客20%、個人客80%。より多くのリソースを高雄に投入へ
タイガーエア台湾は、日本、韓国、タイ、マカオ、フィリピンの5か国で22就航地、29路線を有しており、LCCの成長モデルとなっている。今後の運航路線に関しては、桃園空港の発着枠がすでに飽和状態であるため、高雄に1機を新規導入して運航路線の展開を構想しているという。
張董事長は、台中国際空港は夜間飛行制限に加えて発展性も限られているので、台中への新規機材導入は需要に合わないが、高雄市場には期待しており、より多くのリソースを投入していくと語っている。
ここ数年、タイガーエア台湾と旅行会社の提携は、土台となったチャーター便から、定期便の就航にまで発展した。旭川、佐賀、花巻と同様、来年就航する新潟も、就航当社は団体ツアーを主とするとのこと。同社は地方都市への路線を積極的に開拓し、消費者に向け、より多くの選択肢を提供していくとしている。
しかし、市場では依然として個人旅行が強い。張董事長によると、タイガーエア台湾における団体ツアーと個人旅行者の比率は、以前は個人70%、団体30%だったが、現在は個人75%、団体25%となり、将来の目標は個人80%、団体20%だという。その一方で旅行会社に対してもオンラインでリソースを提供、フリープラン商品(航空券+ホテル)の造成をサポートするとしている。
顧客フィードバックを基に改善策。新機材は明るく元気でリゾート感ある内装
タイガーエア台湾は、今後も手頃なLCC価格で、より多くの消費者の海外旅行を後押しするという目標を掲げている。利用客からのフィードバックを参考に改善策を講じてサービスを強化するほか、台湾ならではのサービス精神と特色を生かしていく予定だ。具体的には、ウェブサイトのインターフェースをシンプルで使いやすいものに改良したり、異業種提携を通じて、ボーディングパスにより多くのサービスや優待割引特典などを付加していくとしている。
また、タイガーエア台湾はリースもしくは購入による新機材を、2021年から順次就航させて輸送力を拡大する予定だ。張董事長は新機材について、「旅行への期待感を高めるような、明るく活気ある内装にしたい」としている。
張董事長によると、「安全第一を原則に、『親切、熱意、まごころ』の精神で、現地化したサービスを提供すること」がタイガーエア台湾の強みとのことで、日本路線や韓国路線の機内に、それぞれ日本語、韓国語を話す乗員を配置しているのもその一環だという。
今後も運航路線とサービス拡大へ。日本路線では就航地20か所目指す
経営拡大に向け、タイガーエア台湾は現在、他のLCCやフルサービスキャリアとの提携や、各国の地方都市への就航を検討しており、今後も運航路線とサービス内容を拡大していく考えだ。
日本路線を例に挙げると、来年の新潟線開通により同社の日本での就航地は15か所となるが、さらに5か所への就航が可能だと見込んでいるという。また、運航路線をより密にするため、業務提携やコードシェアを他社に打診することも検討中だ。
董事長は社員との食事会を毎月開催。交流を通じて団結力を強化
タイガーエア台湾は創立5周年を迎え、張董事長も就任から満3年が経った。この3年でタイガーエア台湾の経営は軌道に乗り、毎年黒字を計上している。これまでの損失を埋める重要な3年となった。
タイガーエア台湾5周年に際し、張董事長は勤続満5年の社員32名(うち10数名は客室乗務員)に対して、現在タイガーエア台湾は経営が安定していること、離職率も10%未満となったこと、近いうちに乗務員も新たに募集することなどを報告した。また、社員とのコミュニケーションについて、「風通しの良いコミュニケーションチャンネルの採用」を強調し、会社にとってプラスとなる提案や、同乗する乗務員に欠けている部分があれば、勇気を持って会社に知らせてほしいと社員らを激励した。
張董事長は毎月、パイロット、客室乗務員、空港スタッフ、それぞれの部門ごとに食事会を催している。1~2時間の食事を共にしながら、社員の意見に耳を傾けて、会社の目標について語っているという。こうしたコミュニケーションを通じて団結力を強化し、社員が会社に対して抱いた誤解を解消するのが狙いだ。董事長に就任してからの3年間について張董事長は、「苦労はあったが、そのかいはあった。会社は安定成長期に入り、社員たちの仲も良く、共通の目標もある。懸命に仕事をすれば、タイガーエア台湾は定年まで勤める価値のある、優れた企業体質の航空会社だ」と語った。
文:唐 偉展、写真:王修文、翻訳·編集:JTアライアンス・インバウンド大学@台湾編集部
【TTN旅報Vol.1109, 2019年9月23日発行 P14-15】