- shikiko7
旅行クレーム対応の猛者が吼える!日本旅行トラブル実例&解決策
台湾の旅行業界にかかわる「本音」を、こっそり教えてもらう企画。今回は、台湾発の旅行で発生したクレームが持ち込まれ、その処理にあたる「中華民国旅行業品質保障協会」(以下、品保協会)に、日本旅行にまつわるトラブルと、その対応を聞いた。

現地オプショナルツアーは、クレームがいっぱい
日々、品保協会には旅行にかかわるトラブル相談が持ち込まれていますが、日本旅行に関してのトラブルは、主に台湾人旅行客と台湾の旅行業者間にあり、日本側施設に問題があるケースはとても少ないですね。
いちばん多い「その他」案件のなかでも、特に目立つのが現地で使用する各種チケットや、現地で参加したオプショナルツアーに
関するものです。ですので、オプショナルツアー会社の「KKday」や「KLOOK」に対するクレームが、全体の半数ほどを占めています。
協会を通じての和解の場合、ツアー料金返還が大半です。和解に至らなかった場合は、双方による裁判となり、品保協会の管轄ではなくなります。
さてひとつ、解決策についても考えさせられる、日本旅行にまつわる事例をお話ししましょう。
ツアー旅行中に骨折!病院へ行くのが遅れたのは、なぜ?
消費者側のクレーム
私の母は70代。台湾のいけばなクラブで楽しく活動しています。そのクラブメンバーと、ツアーコンダクターが帯同する日本旅行ツアーに参加しました。旅行中は観光バスの移動が中心でしたが、ステップが高いので、バスから降りるときに足を滑らせ足首をひねってしまったんです。サロンパスを貼りましたが、腫れはどんどんひどくなる一方だったとか。
母からのLINEでそのことを知った私は、すぐに「病院へ行って!」と伝えました。どうして、ツアーコンダクターは、足をひねったその場所から、母をすぐに病院に連れて行かなかったんでしょう!! しかも、私の返事を見た母は「病院へ行きたい」とツアーコンダクターに言ったのに、その時も連れて行ってくれなかったっていうじゃありませんか!
私はその時台湾におりましたが、義理の娘が日本にいましたので、すぐに母のもとへ駆けつけさせました。
母が泊まっていたホテルの近くには、病院はありませんでした。ツアーコンダクターは娘に「今の時間だと、大きな病院へ行くには交通手段はタクシーしかない。翌朝ならバスで行くことができる」と言ったそうです。そこで、次の日に娘は母を連れ、バスに乗って病院へ連れて行ったところ、母の足にはひびが入っていたんです!
ツアーコンダクターが治療を遅らせたことで、母の足は悪化したんです!! この不当な扱いから受けた、精神的苦痛もはかりしれません。慰謝料と賠償金20万元の支払いを求めます。
ツアーコンダクターの主張
お母様が足をひねったとき、具合をたずねたところ「大丈夫」とのお返事でした。そのまま移動を続けましたが、悪化しているようでしたので病院へ行くことを打診しました。でも、ご本人が「行かない」とおっしゃったんです。
その後、(お嬢さんからLINEでうながされたのでしょう)「病院へ行きたい」とうかがいましたが、その時は、近くには保健所しかないような場所におりました。ですので、ホテルに戻った後、ホテルの方に病院を教えていただいたほうがよいとをお伝えし、ご納得いただいたうえでツアーを続けました。
ホテルに着いてすぐに日本人のホテルスタッフに相談したところ、「大きい町の病院に行ったほうがいい」とのことでした。ですが、ホテルから町へは距離がありました。日も暮れておりバスは走っておらず、タクシーで行くしか方法はありません。日本のタクシー代は台湾と比べて高いということ、そして翌朝になればバスがあることを、時刻表とともにお母様と義理の娘さんに説明しました。最終的に、おふたりは翌日に病院へ行くことにされたのです。
病院に行くかどうか、決めるのは当事者か当事者に関係の近い人物です。無理やり連れていくことはできません。こちらは再三、病院へ行くかどうかうかがいました。最初に「行かない」と決めたのはご本人。その後は義理の娘さんも、その日ではなく翌日に病院へ行くことに同意されました。
品保協会による調停の結果
けがをした女性は調停の場で、「病院に行かない」とは言っていないと主張しました。もしかしたら、お嬢さんに気兼ねしたのかもしれません。ですが、一緒に旅に参加したいけばなクラブのメンバーより、女性の言い分は事実でないことが明らかになりました。最終的に双方による和解によって、調停は終了しました。
日本でのけが人・病人問題は、日本と手を取りあって解決に導きたい
ツアー客が現地でけがをしたり、病気になる事例は珍しくありません。中国など言葉の通じる国、もしくはヨーロッパなどでツアーコンダクターとガイドが2人いる場合は、対応が比較的楽です。
ですが、訪日ツアーの多くは、ツアーコンダクターが現地ガイドを兼ねており、有事に対応できる人がひとりしかいない場合が多いのです。そうすると、「ツアーを続行」するか、「けが人や病人を、先に病院に連れて」いくかの選択を迫られることになります。その判断を間違うと、クレームの原因となってしまいます。
台湾の法律では、旅行中に「深刻な状況」が起こった場合、24時間以内に台湾の観光局に報告すれば、支援を受けることができます。ですが「深刻」の定義は極めて曖昧です。当事者たちが判断できなかったり、24時間を過ぎると対応してもらえないので、あまり実用的でないのが現状です。
そこで、品保協会では、ツアー中にけが人や病人が出た場合、以下のステップでの対応を旅行会社にアドバイスしています。これは日本で観光業に携わる方にもかかわることですので、ぜひ心に留めておいてください。
【ツアー中のけが人や病人への対応】
ツアーを催行した台湾の旅行会社に連絡する
台湾の旅行会社から、提携している日本の旅行会社に連絡する
日本側旅行会社が交通費の問題などから現地に駆けつけることが難しい場合、ツアー一行がいるホテルやレストランに代わりに連絡してもらい、援助を求める
現在、日本のホテルやレストランには多くの台湾人や中国人が働いているので、病院での診察時などの言葉の問題を解決するために、サポートを依頼する
これら以外に、日本の自治体や民間団体によるサポートや、情報提供があるとよいですね。けが人や病人へのサポート情報――病院の場所や言語対応表などをあらかじめ宿泊施設や飲食店・小売店などに配布していただき、そうした情報資料があるということを台湾サイドに周知していただければ、これほど心強いことはありません。
■中華民国旅行業品質保障協会(品保協会)とは
旅行の品質を上げ、旅行者の権利を保障することを目的として、1989年に創立。台湾の約9割もの旅行会社(本社・支社ともに)が会員登録をしている。会員である旅行会社の旅行商品で契約に反すること、消費者が被害を受けることがあれば、品保協会に申告することで調停が開かれる。もし旅行会社に問題があれば、消費者に賠償金が支払われる。旅行会社が消費者を守るために自主的に立ち上げた公益団体である品保協会は、台湾人旅行者と、旅行会社を結ぶ懸け橋となっている。
http://www.travel.org.tw/Default.aspx