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【私の新型コロナ対策生活①】台湾旅行業界の多くが謳う「今こそ団結!」その真意は?

新型コロナウイルスの影響が全世界に広がり景気が下落しているが、なかでも観光旅行業が受けたダメージははかり知れない。この厳しい時期に、台湾の旅行会社の経営者や従業員たちは、いったいどんな気持ちで過ごしているのだろう?現状への対策や、本音を聞いてみた。

▲【左から】スターラックスの高雅婷 営業主任、佳達旅行社の林文恵さん、喜鴻旅行社の羅建志 ホールセラーマーケティング部主任


スターラックスの高雅婷 営業主任 

旅行会社関連のSNSで互いに慰め、ストレス発散


春節期間、中国大陸で少しずつ肺炎の伝染病が広まっているという情報がありました。最初はあまり気にしていなかったのですが、1月23日の小年夜(旧暦の大晦日の前日)に武漢閉鎖が始まってから、みんながこのウイルスの怖さに気づき始めました。元日(1月25日)に空港に行ったのですが、いつもはにぎわっている桃園空港に人気(ひとけ)はありません。


春節休みに入ってからは韓国ドラマ「愛の不時着」が人気になり、Facebookではヒョンビン演じる主人公のリ・ジョンヒョクが話題になっていましたが、その後一瞬でダイヤモンドプリンセス号の話に埋もれてしまいました。


旅行者のみなさんからの航空券のキャンセルについての問い合わせが急増し、電話を受けるたびに背筋が寒くなります!


休み明けからの心境の変化としては、まず1週目は毎日クタクタになって帰宅していました。世の中が嫌になる気持ちでした。


2週目は、友人とどの会社の路線のキャンセル率が高いかについて話し、愚痴をこぼしあっていました。


3週目からは、弊社に来る連絡はすべてキャンセルに関することだという事実を、少しずつ受け入れはじめました。退勤したあとにFacebookで「靠北旅行社(※)」のコメント欄を見て傷を舐めあい、文章を投稿してストレスの発散をしています。そして、同業の友達とも連絡をとりあい、互いに気を配っています。


※Facebookのページ。主に旅行会社関係の愚痴などを匿名で発表できるページ



佳達旅行社の林文恵さん 

メディアの報道の過剰さはSARSのころ以上


新型コロナウイルスは一向に治まる気配はなく、旅行業者が受けた衝撃は深刻です。これまで多くのキャンセルを受理してきました。


例えば、私の顧客に韓国旅行を予定していた4人家族がいましたが、ご主人の会社から「韓国から帰国した後は自主的隔離が必要」という公告があり、人事評価に響くかもしれないからとキャンセルを希望されました。


別のお客様は春節に中国大陸に行くつもりでしたが、出国できずに返金することになりました。


旅行商品を販売できず、これまで頑張ってきた仕事も無駄になり、業績が悪くなる一方で誰も喜べません。


旅行業に携わる者として、お客様が怖がる気持ちは理解できるのですが、多くの方は感染状況や隔離、防疫などについてあまり詳しくないのが現状です。心配しすぎるより、正しい防疫の観念を築くほうがもっと大事だと思います。私の考えではありますが、お客様には今回の感染状況はそれほどひどい状況ではなく、むしろインフルエンザのほうが致死率が高いとお伝えしたいです。


ですが、お客様が私の意見を受け入れるかどうかはまた別の話です。例えば一部の方は、「旅行会社はお金を稼ぐためにツアー参加を勧めている。肺炎にかからないなんて保証できるのか」と思っています。


民衆の不安はやはりニュースと関係があると思います。最近はメディアの報道が過剰すぎて、情報の氾濫はSARSの時より人をパニックさせています。社会が混乱していて、気持ちに大きく影響しているのです。


喜鴻旅行社の羅建志 ホールセラーマーケティング部主任 

月曜日にキャンセルが殺到。割引好きな台湾人には、収束後のキャンペーンが効果的


私は今、台中支社のホールセラー部門で管理職を務めています。

新型コロナウイルスによるツアーキャンセルについては、最初は中国、香港、マカオが主な対象だったのが、各国の感染状況の広がりによってお客様の不安を引きおこし、比較的ウイルスの影響が少ないヨーロッパ、トルコでもキャンセルが始まりました。

特に毎週月曜日がキャンセルのピークです。というのもニュースは週末によく大きな話題を報道するために、お客様は週明けの月曜日に次々と行動を起こすからです。

第一線にいるエージェントは、まず感情的になるお客様の対応をし、私たちも彼らがお客様への説明時に役に立つように旅行の法規や危険情報などをグラフ化して整理しましたが、やっぱり困ることもあります。


例えば、すでに人数が揃っていたツアーがありました。一部の不安なお客様がキャンセルを希望されましたが、旅行会社が手数料を取ることについて難色を示しました。その様子を知ったほかの参加予定の方々は、人数不足で自動的にツアー不履行になれば自己責任ではなくなり、旅行会社から返金されるので、その時が来るのを待っている状況です。


しかし、もし旅行会社が「人数不足でも大丈夫。こちらが損失を負担して出発します」と言えば、お客様から不満が出るでしょう。一方ツアーをキャンセルしたら、エージェントたちはそれまでの仕事が無駄になるだけでなく、お客様からキャンセル手数料をもらえないと思うかもしれません。そして、最初にキャンセルしたお客様も、キャンセル料の返金を求めるでしょう。


最近は一部の旅行会社が旅行商品のセールスに力を入れていますが、あまり効果はないと思います。この時期を利用して、研修や戦力を貯めるほうがいいと思います。感染のピークはいつか過ぎます。私は楽観的に推測していますが、SARSの時のように半年くらいは影響があるだろうと思っています。


台湾人は感染に関してはとても恐れますが、一方で割引が大好きで、割引と聞けばがぜん積極的になる性格です。事態が収束して各旅行会社と航空会社が割引キャンペーンを行えば、景気はまた回復します。

【左から】祥順旅行社の羅麗瑩 社長、百威旅行社の俞示芬 副社長、旅遊家旅行社の周順禹 社長、馨楽旅行社の許策淵 社長


祥順旅行社の羅麗瑩 社長

理性的なコミュニケーションで、2月のインセンティブツアーは成功


私はMICEを扱うことが主で、ひとつのツアーに100人、もしくは数百人が参加します。企業によって新型コロナウイルスに対する旅行の規定が違うので、我々は旅行先の変更について、航空会社、ホテル、クルーズ、提携している現地の旅行会社と相談します。すでに前払い済みの席や部屋は、できるだけ延期することで対応するしかありません。


まず印象に強く残ったのが、2月上旬にペナン州+ランカウイ島に向かう予定だった、180人のインセンティブツアーです。当時はウイルスの発生が始まったばかりでしたが、多くの人が旅行に不安を感じていました。ペナン州とランカウイ島は感染地域ではなく、航空会社も運航中止や欠便していないため、企業と相談し、次の3つのコンセンサスを得ました。

①旅行中に差別されることはない ②国旗を提供し、台湾人だとわかるようにする ③旅行会社の社長自らが参加


目的地に到着したら、現地の良好な気候と雰囲気に囲まれ、参加者の方々はマスクを取ってバカンスを楽しんでいました。旅行帰りの満足度も高いものでした。今回のこのインセンティブツアーは、「理性的にコミュニケーションをはかれば、安全な地域なら旅行できる」ということを証明しています。


私は長年協力しあっているビジネス仲間に、かねてより「一文惜しみの百知らず」にならないよう気をつけようと言っています。


あるツアーではホテルに200万元(約720万円)の前金を払っていましたが、来年に延期して利用できるよう合意を得ることができました。また、行き先を他の地域に変更できるよう、もしくは搭乗期限を延長できるように航空会社と相談して、キャンセルを回避しました。そして、お客様には誠意を持って接し、出発の延期や他の就航先への変更などについて話しあいます。


理性的なコミュニケーションのおかげで、多数の企業が協力してくださり、MICEツアーはほとんど延期で決行することになりました。しかし、一般の旅行者は感情的に訴えることもあり、キャンセルになることが多いです。



百威旅行社の俞示芬 副社長 

これを機に、台湾の旅行業界の健全化と品質の向上を!

新型コロナウイルスが拡散しはじめた時、実はあまり心配していなかったのです。しかし、日々感染が広がり、家族も私を心配してあまり出国しないように言っています。


メディアの報道は民衆の不安を引き起こしてはいますが、旅行会社との契約、返金のことについての情報も正しく伝えています。お客様ときちんと話しあえば、ほとんどの方から理解を得ることができます。会社がちゃんと後ろ盾になってくれているおかげと、同業者が一心同体となってこの厳しい時期に立ち向かっているので、とても感謝と嬉しさを感じています。


新型コロナウイルスによる旅行業界への打撃は自覚していますが、これを機に体制が不健全だった会社をふるい落とし、市場に新風を吹き込み、品質を上げることも悪くはないと思います。



旅遊家旅行社の周順禹 社長 

徐々にキャンセル依頼は少なくなり、旅行へ目を向ける顧客も


新型コロナウイルスへの不安と懸念は、春節明けに一気に爆発しました。出勤早々にお客様からのキャンセルの連絡を受け、以降電話はほとんど途切れず、毎日キャンセルがあります。オーストラリア、ニュージーランドは感染地域ではありませんが、感染状況の広がりの影響によって、多くの方が出国意欲を失くしています。


政府の規定として、航空券の発券、パスポートやビザ所得代行などの手数料は旅行会社が先払いしています。お客様は細かいことがよくわからないので、返金すべき金額のことしか考えていらっしゃいません。もし旅行会社がきちんと説明しないと、品質保障協会に訴えられるか、すぐに内容証明が届きます。


とはいえ2週間がすぎると、キャンセルはだんだん少なくなっていました。最初は返金を求められたお客様の一部も、旅行して気分転換してもいいと考えはじめています。


多くのツアーが参加人数を30人から10人までに縮小していますが、角度を変えて考えてみれば、少人数だからこそ品質の高いツアーを提供できるということです。会社もガイドたちに、できるだけ多くの文章をSNSに投稿して、ポジティブエネルギーをみんなに届けようと励ましています。


ここのところ毎日午前の会議で営業と打ち合わせをして、状況を分析しています。ずっとお客様と平行線の話しあいをしていても仕方がありません。お互いが納得できる妥協点を見つけるしかないのです。昔は同業者とお客様を奪いあっていましたが、今はどうやってお客様を引き留めるのかを勉強しています。


中・小規模の旅行会社が潰れるのではないかという心配がありますが、クルーズ会社はさらに厳しい現実に向きあうでしょう。ニュージーランド、オーストラリアの現地旅行会社の多くがすでに半給や休暇となり、影響は想像以上に深刻です。


この時期は会社の経営方針、仕事の流れなどを調整すること以外、同業者との交流を深めることもできるでしょう。単に慰めあいではなく、お互いの交流の機会を増やして、ともに学んで成長します。災害はいずれ過ぎます。その時までに準備を整えて、お客様にもっとも良質な商品を提供します。



馨楽旅行社の許策淵 社長 

社員の士気が下がることは、新型コロナウイルスより怖い


年末年始に馨楽旅行社はふたつの打撃を受けました。まずはファーイースタン航空の中部総代理として、運航停止の問題で100万元(約360万円)近くの損失を食らいました。その直後に新型コロナウイルスの影響で、金門と厦門の寺院参拝ツアーの約300人分がキャンセルとなりました。


市場が厳しい状態ですが、社長としては落ち込むわけにはいきません。弊社は感染状況が悪化した時に、すぐに社員へ「最後まで戦う心の準備をするように」と通達しました。


まずは比較的コントロールしやすい国内旅行から始め、澎湖の商品を改めて企画しました。林立した玄武岩が見事な島・虎井嶼への特別な旅行路線を企画し、視察に行く同業者を募集したところ、1日もたたずに500人以上が参加を希望してくれたのです。「抗疫救觀光,消費留台灣(ウイルスに対抗し観光を救う、消費は台湾で)」というスローガンで同業者を励ましました。


こうしたさまざまな対策は短時間では会社に利益をもたらしませんが、減給、無給休暇などの対応を行えば社員の士気に影響を与えます。それは新型コロナウイルスよりも怖いことです。



文:TTN TEAM、翻訳·編集:JTアライアンス・インバウンド大学@台湾編集部 【TTN旅報1130/1131期, 2020/2/24発行, P8-9】


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