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【第1回】観光マーケティングとは / 講師 後藤直哉

みなさん、はじめまして。株式会社mekesの後藤と申します。これから「インバウンド客増加のための観光マーケティング入門」を担当させていただきます。よろしくお願いいたします。


「観光マーケティング」という言葉の意味


さて、みなさんは「観光マーケティング」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?この言葉は、「観光」と「マーケティング」という言葉で構成されており、色々な解釈が存在しています。


例えば、一言で「観光」と言っても、人によって意味の捉え方も様々であり、抽象的で定義が難しかったりしますね。


「旅」と「観光」はどう違うのか?

「旅行者」と「観光客」の違いは?


など、「観光」という言葉の定義は常に議論になります。


一方、「マーケティング」という言葉はどうでしょう?


日本マーケティング協会の定義によると、「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」とされており、「マーケティング」とは市場創造を行うことを目的とした活動であるとなっています。


世界に目を向けてみると、アメリカマーケティング協会は「マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のあるオファリングス(提供物)を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである」と定義しており、「マーケティング」とは、想像・伝達・配達・交換するための活動であるとされています。

この二つの解釈を比較してみると、市場創造を目的に据えた日本マーケティング協会と、プロセスを重視しているアメリカマーケティング協会では、やや違った解釈がなされているのではないでしょうか。


この様に、様々な解釈が存在する言葉同士を組み合わせた「観光マーケティング」という言葉は、さらに定義をややこしくしてしまっているようで、巷で使われている「観光マーケティング」という言葉は、多様な解釈に基づき、様々な取り組みが存在しています。


そこで、まず第1回となる今回は、本記事の中で「観光マーケティング」とは何を指すのかを改めて整理します。


「観光行為」とは


下図は、「観光」を行う行為、すなわち「観光行為」を図で表したものです。「観光行為」については、政府の観光政策審議会による「今後の観光政策の基本的な方向について」(答申第39号、1995年6月2日)の中で、「余暇時間の中で、日常生活圏を離れて行うさまざまな活動であって、触れ合い、学び、遊ぶということを目的とするもの」とされています。


また、公益財団法人日本観光振興協会は「自由時間のなかで生活の変化を求める人間の基本的な欲求を満たすための行為のうち、日常生活圏を離す異なった環境のもとで行われる行動」としています。


さらに、UNWTO(国際連合世界観光機関)は、「継続して1年を超えない範囲で、日常の生活圏から外へ移動し、また日常の生活圏へ戻る報酬を伴わない行為である」としています。

これらの定義で共通するのは、「観光行為」とは「日常の生活圏から外へ移動すること」であり、「無報酬」で「一定期間で日常圏へ戻る」ことを前提としていることがわかります。それをわかりやすく図に落とし込むとこの図の様になります。


では、この「観光行為」を促すために行われる「観光マーケティング」とはいかなるものなのでしょうか?


「マーケティング」を行う対象が複雑


「マーケティング」の定義は前述した通り、市場創造を目的に据える考え方と、交換のプロセスを目的に据える考え方があることは説明しました。


この考え方に当てはめて「観光行為」を捉えなおすと、「観光行為」とはサービス産業の一部であると捉えられることが多く、サービス産業は一般的に「同時性(生産と消費が同時に発生する)」と「変動性(提供者により品質が左右される)」が高いことが特徴であるとされているため、「観光行為」自体も「同時性」と「変動性」が高い行為であることがわかります。そのため、「観光行為」に対して対価を得ることを生業とする観光産業は、「同時性」と「変動性」の高さから、提供する側の人的サービスの質が満足度に大きく影響を与える産業であることがわかります。


一方、観光産業もその範囲が広く、宿泊事業者や交通事業者の場合は、いわゆる観光産業を支えるインフラであるといった色合いが強くなるため、人的サービスの質に加えて、施設や設備などに対する評価が満足度に大きく影響してくることになります。また、観光産業には飲食業やミュージアム、テーマパーク、ショッピングモールなども含まれ、さらに、景勝地や文化史跡などの自然や建造物も観光産業を構成する対象に加わるため、「マーケティング」を行うための対象が多岐にわたり、「観光マーケティング」の対象を複雑にしてしまっています。


まずは定義づけをしっかりしましょう


そこで、私たち「観光マーケティング」を専門としているコンサルタントは、「観光行為」をある特定の施設へ訪れる人として捉えるのではなく、マーケティングの対象を「観光行為」を行う「場」として捉え直すことで、何に対してマーケティングを行うのかを定義づけるように心がけています。


つまり、マーケティングの対象となるものは特定の施設ではなく、「場」と考えるべきであり、それは日本全体であったり、県単位であったり、市町村単位であったりするという考え方です。


一方で宿泊施設の宿泊者数を向上させるのであれば、宿泊施設のコンサルタントが存在しますし、交通事業者に対するコンサルタントも存在します。


そのため私たち「観光マーケティング」を専門としているコンサルタントは、これらの観光関連施設をトータル的にとらえ、「場」として平面的に対象を設定することで、「観光マーケティング」を成立させているのです。

ここまで書くと、やや複雑な話になってきてしまっていますので、かみ砕いて説明すると、特定の地域に、いかに多くの観光客に来てもらうかを考えることが「観光マーケティング」の究極の目的となります。その為に、情報発信や受入環境整備、観光コンテンツの開発、モデルコースの開発など、具体的な施策を行うことになります。


これから「観光マーケティング」の世界へ足を踏み入れる皆様は、マーケティングの対象となる「場」をどこに設定するのか、まずはそこからイメージしてみてください。


次回は、具体的な施策を進めるための基本的な手法「R-STP」について解説します。


これで第1回の講義は終了します。


後藤直哉 Goto Naoya


株式会社makes代表取締役

法政大学 地域創造システム研究所 特任研究員


北海道出身。フリーのマーケティングプランナーとして独立後、2009年に株式会社makesを設立。地域における観光振興を目的とした各種プロジェクトやシティープロモーション事業など、外国人観光客を含む観光マーケティング・コンサルタントとして活動する。法政大学では、地域における観光推進組織の在り方に関する研究を行っている。



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