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【第2回】観光マーケティングの基本「R-STP」について /講師 後藤直哉

みなさん、こんにちは、株式会社mekesの後藤です。第2回となる今回は、観光マーケティングの基本的な進め方である「R-STP」について解説させていただきます。


「R-STP」とは?


みなさんは、「R-STP」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?マーケティングの基本プロセスの一つですが、観光マーケティングでも「R-STP」はとても重要な考え方となります。


図1:「R-STP」について

観光マーケティングの基本プロセス

まずは図1をご覧ください。「R-STP」とは、「Research」「Segmentation」「Targeting」「Positioning」のそれぞれの頭文字をとったものです。マーケティングを進めていくための基本的なプロセスを整理したものですが、様々なマーケティングに関する取組は、このプロセスに沿ってその都度必要な調査と分析を行って解を導き出していく活動と言えます。


また、「R-STP」の下に「プロモーション戦略」と書いていますが、これはマーケティングのプロセスの中で手段にあたる取り組みになりますので、「R-STP」により基本的な戦略を設定した後に「プロモーション戦略」を組み立てていくという全体の流れをわかりやすく示したものです。


このマーケティングの基本的なプロセスは、観光マーケティングでも様々な場面で活用することが出来ます。


R(Research)⇒市場分析

「R=Research」では、来訪者調査や対象市場の調査、観光資源調査などがそれに含まれます。まずは現状を知ること、それもできる限り詳細に、正確に知ることがとても重要になります。そのため、観光マーケティングではまず初めに様々な手法で「Research」を行うことになります。


S(Segmentation)⇒市場の細分化、想定市場、想定競合

続いて「S=Segmentation」ですが、来訪者調査の結果から、観光地にどの様な観光客が訪れているのか、新たにターゲットに据えることができる観光客はどのような属性になるのか、想定できる顧客像のグループを作っていきます。例えば「台北に住む中間層の未就学児を含む家族」とセグメンテーションを設定した場合、このグループはどのくらいの来訪確率があるのかを予測します。予測の方法も様々ありますが、主に行う方法はモニターツアーや対象市場へのアンケート調査です。


T(Targeting)⇒顧客層の明確化、ペルソナ

ある程度のグループを設定した後、「T=Targeting」を行います。多数のグループに対して一斉にプロモーションを行うことはプロモーションコストの分散化を招いてしまうため、あまりお勧めできる手法ではありません。マーケティング効果の最大化に関する考え方は改めて詳しく解説しますが、私はできるだけターゲットは絞り込んでプロモーションを行うことを推奨しています。そのため、どのターゲットに対してプロモーションを行うべきかについてはとても重要な決断になりますが、「R→S」までのプロセスをしっかり行っていれば、おのずと答えは見えてくるものです。


P(Positioning)⇒競争優位、差別化、独自性、ユーザーベネフィット

ターゲットが決まると、次に行うプロセスは「P=Positioning」です。設定したターゲットに対して、私たちの観光地はどのような価値を提供することができるのか、ターゲット像をさらに絞り込み、具体的な嗜好や生活までを想定し(これをペルソナと呼びます)、顧客のニーズに応えることができる地域資源を考えます。そして、これを印象的に伝えるためのコンセプトやメッセージを設定していきます。これら一連の作業を「Positioning」と言いますが、この時点では地域の方々との話し合いは不可欠になりますし、クリエイティビティが必要な作業となるため、コピーライターやデザイナーが加わって作業することも効果的と言えるでしょう。


手順を踏むことの大切さ


さて、一言で「R-STP」と書きましたが、ここまでの内容を読んだ方は、「なぜここまでやるのか?」「もう少し効率的な方法があるのでは?」と思われる方もいらっしゃるのではないかと思います。


すべての手順を踏まなくても、どこかを飛ばして進めていっても問題ないのではないか、その方がスピードも上がるし効率的なのではないかと考えてしまう気持ちはとてもよくわかります。私も様々な地域で観光コンサルタントとして観光マーケティングに係わっていますが、この手順を踏むまどろっこしさは重々理解しているつもりです。


しかし、観光コンサルタントとして地域に係わる際は、必ずこのプロセスを踏むことをお勧めします。それはなぜなのか?


マーケティングは実施後に検証可能であること、成功した場合は成功要因、失敗した場合は失敗の原因を検証する必要があります。そうでなければ私たち観光コンサルタントが地域のお手伝いをする必要はありません。


例えば、ある閃きからプロモーションを行った場合、それが成功したとしても成功要因がわかっていなければ効果を継続することは難しくなってしまいます。また、万が一失敗した場合、失敗した原因がわかっていなければ、改善策を講じることも難しくなってしまいます。

つまり、マーケティングは必ず検証が必要となることを頭に入れ、「R-STP」のどの段階で手を誤ったのか、もしくは選択が正しかったのかを地域側に示すことが私たちの重要な業務となります。その結果、次の手段を提示することが可能となるからです。この考え方は、いわゆる「PDCAサイクル」と言われるものですが、このサイクルを実現するためには、まどろっこしくても「R-STP」のプロセスに沿ってマーケティング活動を行う必要があるのです。


地域内の意思統一に向けた取り組み


さらに、観光マーケティングは「場づくり」であると前回書きました。「場づくり」とは、地域の方々と我々観光コンサルタント間の意思統一が必要ですし、地域内における戦略の共有は必須となります。その際、導き出したプロモーション戦略をロジカルに説明することが求められますが、自分流の導き出し方や、根拠のない閃きだけで地域の方々に説明することはほぼ不可能です(少なくても私はそのような方法で説明したことは一度もありません)。


つまり、「R-STP」のプロセスを踏襲することは、検証可能な環境を整えるだけではなく、地域内の戦略の共有にとっても重要な手法であることをお伝えしておきます。


観光マーケティング担当者の責任


私は多くの地域で観光コンサルタントとして観光マーケティング戦略立案に関わっていますが、意外なほどこの「R-STP」のプロセスを理解していない方、軽視している方が多いことに驚きます。だからこそ観光コンサルタントという職業が成り立つのかもしれませんが、観光マーケティングに携わる方はぜひ、このプロセスをしっかり身に着けて実践するスキルを習得していただければと願っています。


観光マーケティングの担当者は単純に良い企画を作ればよい、ということではありません。様々な観光関係者との調整が必要となる観光マーケティングの現場においては、観光マーケティングの基本「R-STP」を活用して地域内の意識統一を図り、そのうえで狙った通りの成果を出す観光マーケティング担当者を目指してください!


次回は、「R-STP」の「Research」について、具体的な手法を解説します。これで第2回の講義は終了します。


後藤直哉 Goto Naoya


株式会社makes代表取締役

法政大学 地域創造システム研究所 特任研究員


北海道出身。フリーのマーケティングプランナーとして独立後、2009年に株式会社makesを設立。地域における観光振興を目的とした各種プロジェクトやシティープロモーション事業など、外国人観光客を含む観光マーケティング・コンサルタントとして活動する。法政大学では、地域における観光推進組織の在り方に関する研究を行っている。

ネクスト・ツーリズム・コンサルティング

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