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【第5回】できるだけ矢を鋭く尖らせる「Targeting」 / 講師 後藤直哉

みなさん、こんにちは、株式会社makesの後藤です。5回目となる今回の講義は、プロモーションを行う上で狙いを定める行為「Targeting」について解説させていただきます。

「Targeting」とは

今皆さんは、ここまでのR-STPの手順に沿った様々なプロセスを経て、「Targeting」に必要な情報はすべてそろった状態となっています。


Research」では、「3C分析」を基礎として、「Customer(来訪者)」「Company(当該地域)」「Competitor(他の地域)」に関する調査データを揃えました。


光マーケティングにおける「3C分析」

Segmentation」では、これらの調査データから当該地域におけるターゲットとなり得るグループを整理しました。

セグメントの分類方法


これらの作業を行う過程で、徐々に皆さんの中で顧客像が見え始めてきているのではないかと思います。そこで次に必要な作業は、できるだけ矢を鋭く尖らせる「Targeting」という作業になります。


一言で言うと、「Targeting」とは、これまでの作業結果から、より鮮明な顧客像を明らかにする行為です。R-STPの手順においては、「Targeting」の後に「Positioning」が待ち構えています。そのため、鮮明な顧客像が出来上がっていないと、次のステップに移行できないことになってしまいます。では鮮明な顧客像とは一体どういうことなのでしょうか?

光マーケティングの基本プロセス


仮の話ですが、事例を用いて説明します。ある地域で、温泉施設を活かしたプロモーションを予定しているとします。様々な調査結果から台湾の家族をターゲットに据えました。そこでターゲット像を「台湾に住む温泉好きの家族」と設定し、プロモーションコンセプトを策定、実行に移しました。その結果は、思うような効果を上げることは出来ませんでした。なぜでしょうか?


ターゲット像を「台湾に住む温泉好きの家族」と設定したものの、その家族が果たしてどの程度の所得層なのか、海外旅行はどの程度経験はあるのか、日本に来た経験はあるのか、普段どのような生活をしていて、温泉には何を求めてきているのかなど、ターゲットの詳細が全く分からなかったため、プロモーションがぼやけたものとなってしまったのが原因でした。


一方、別の地域では、同じく温泉を活かしたプロモーションを予定していましたが、ターゲット像をとことん突き詰めました。ターゲットを「台湾の台北地区で、高層マンションに住む3人家族。子供は10歳で野球好き。夫は42歳のITエンジニアで、会社では役員を務めている。妻は38歳のデザイナーで、共働き世帯。普段忙しくしている夫婦だが、まとめて2週間の休みが取れることになったので、家族でのんびりと過ごすことが出来る日本の温泉宿を探していた。夫は日本へ何度も仕事で訪れているため日本のことはよくわかっている」といったような顧客像(ペルソナ)を設定したのです。そのため、プロモーションの手法が明確でわかりやすくなり、想定した効果を上げることが出来ました。


この二つの例は、実際に全国で繰り広げられているプロモーションの良い例と悪い例を私が脚色したものですが、同じような例は全国で枚挙にいとまがありません。


さて、ここでまた新たなワードが登場するのですが、マーケティング業界では顧客像のことをペルソナと呼び、設定したシートのことをペルソナシートと呼びます。



上図は例として私が作成したものですが、それぞれの項目は対象地域に沿った形で変更することをお勧めします。


ペルソナシートは、プロモーションを行う上で重要なシートとなるのですが、このようなものがあると、広告を行う際や地域の方へ説明する際など、幅広く同じターゲット像を頭に思い浮かべられるようになります。そのため、私はほとんどの場合、このようなペルソナシートを作成してからプロモーション計画に移行することをお勧めしています。


ターゲットを絞り込むと、プロモーション効果が限定的になる!?


私がターゲット像をできる限り絞り込んで鮮明にしましょうという話をすると必ずと言って良いほど言われるのが「プロモーション効果が限定的になりませんか?」というフレーズです。「そのほかの属性の人は排除するのか?」、「もっと広いターゲットで進めていくべきではないのか」など、ターゲットを絞り込むことに対して拒否反応を示す人が必ず出てきます。


このことは、ある意味では正しいのですが、ある意味では間違っています。ある意味というのは、プロモーションの目的が「認知拡大」であれば、幅広いターゲットでもある程度の効果が期待できるでしょう。ただし「誘客」が目的の場合は、あまり良い効果は期待できないと思われます。


無関心の壁<1980~2000年代>


上図は私が「無関心の壁」と名付けた理論です。左側が情報を発信する側で、右側が消費者です。情報が少なかった2000年以前は、比較的この壁は薄かったため、ターゲットを広めに設定し、年代で区切ることが一般的でした。あまり絞り込まなくても壁は薄かったため、ターゲットまで到達する確率は高かったものと思われます。

一方、インターネットが登場した2000年以降は一般の方でも容易に専門的な知識を得られる環境が整ったため、ちょっとやそっとの情報ではターゲットに到達することが出来ず、より専門的で絞り込んだ情報発信が必要となりました。つまり、あらゆる手段で情報を入手できる現在においては、この「無関心の壁」が厚くなったのではないかと私は考えています。


無関心の壁<2000年頃~現代>


そのため、壁を貫くためには鋭い矢が必要となり、顧客像を徹底的に絞り込む必要が生まれたのです。この壁を突破すると、その先はSNSによる口コミの世界が広がっています。この現象は2010年以降からみられるものですが、一度ターゲット層に認められたサービスや商品は瞬く間に同じ層のターゲット間で情報が拡散され、その層と似ている嗜好をもつターゲットの間へも伝播していきます。いわゆる口コミと言われるものですが、このことをマーケティング用語で「シェア」と言います。


つまりターゲットをできる限り絞り込むということは、この「無関心の壁」を突破するための作業であり、矢をできる限り鋭くすることこそが「Targeting」の肝であるということです。


背伸びをしない


最後にもう一つ重要な考え方をお伝えします。


ターゲットを決める際には背伸びをしないことです。


例えば、ある国の王族をターゲットにしようと設定したところで、どのような手段で王族にプロモーションを行うのでしょう。また、パリ在住の流行に敏感な女性をターゲットに据えたとして、当該地域で世界の地域と比較して優位性を示すことができるのか、なかなか難しかったりします。そのため、ターゲットを定める際には、まずは調査データやセグメンテーションの内容を吟味して、マーケティングプロセスの一貫性の中で当該地域が戦うことが出来るターゲットを設定してください。


ターゲットと会話しましょう


ここで言う会話とは、実際にターゲットに会って、会話してください、という意味ではありません。


マーケッターは色々な計画を立てるとき、常に頭の中で結果を想像しながら組み立てることが重要です。調査計画を立てるとき、分析を行うとき、セグメンテーションを行うときなど、それぞれの作業においても、常に対象となる顧客のことを想像しながら計画づくりを行うことが求められます。


そして、この「Targeting」では、まさにこのことが求められる作業であり、具体的なターゲット像をイメージしながら、イメージしたターゲットと会話しながら計画づくりを行う癖をつけてもらえると良いと思います。マーケッターは分析力と想像力、この二つのバランスが必要となりますので、日常からこの二つの能力を高められるように意識して過ごしてみてください。


ではそろそろこの辺で第5回の講義は終了です。次回は「Positioning」についてです。

後藤直哉 Goto Naoya

株式会社makes代表取締役

法政大学 地域創造システム研究所 特任研究員

北海道出身。フリーのマーケティングプランナーとして独立後、2009年に株式会社makesを設立。地域における観光振興を目的とした各種プロジェクトやシティープロモーション事業など、外国人観光客を含む観光マーケティング・コンサルタントとして活動する。法政大学では、地域における観光推進組織の在り方に関する研究を行っている。

ネクスト・ツーリズム・コンサルティング

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