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【第3回】無料で使えるSNSや口コミサイトを活用して情報発信する / 講師 萩本良秀
訪日外国人旅行者の情報収集源で、ついに「SNS」が1位に
前回は自社の多言語サイトを制作する際の留意点を解説しましたが、今回はその制作に関わる各論の前に、SNSなど大手インターネットサービスを活用して、情報発信するメリットに触れたいと思います。
「Facebook(フェイスブック)」「Instagram(インスタグラム)」といったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で企業や団体がページを開設する公式アカウントも、自らの意志で情報を掲載できることから、デジタルマーケティングの世界ではオウンドメディアと位置付けられています。すでに巨大なユーザーベースを持つサービスを利用することは、自社サイトを一から立ち上げるのに比べて、閲覧者の獲得で大きなアドバンテージがあります。
観光庁「訪日外国人消費動向調査」最新版の2019年4-6月期報告書では、「出発前に得た旅行情報源で役に立ったもの」で、長年不動の1位だった「個人のブログ」を抜いて、ついに「SNS」が初めてトップに立ちました。
出発前に得た旅行情報源で役に立ったもの(全国籍・地域、複数回答)

4位「口コミサイト」の代表格「トリップ アドバイザー」、同じく4位に急上昇した「動画サイト」の「YouTube(ユーチューブ)」も公式アカウントで、自らコンテンツ発信が可能なメディアです。それらのサービスの中から、インバウンド旅行者への情報発信や誘客に有効なものをピックアップして、それぞれの特徴や注意点を見ていきます。
台湾でも人気の「Facebook」「Instagram」を活用して自らの情報を発信
中国と違い、台湾では皆さんもよくご存知のグローバルなネットサービスが広く使われています。日本企業や団体による「Facebookページ」はおなじみの方も多いでしょう。「いいね!」やシェア、コメントといったユーザーの反応を見ることができ、ページをフォローしてくれたユーザーのタイムラインには継続的に投稿を表示できます。
多言語で注意する点は、1つのページで複数言語を出し分けて表示することはできません。すでにある日本語の「Facebookページ」に、投稿ごとに日本語と一緒に中国語を併記するやり方もありますが、文字量が多くなり、英語などほかの言語でも投稿したい場合や、つきつめていって国・地域によって好まれるコンテンツが違うとなった場合などを考えると、言語ごとに別のページを立ち上げることがおすすめです。
台湾人に絞って情報発信したい場合などは、属性を指定したFacebook広告の配信が有効です。Facebook社は「Facebook Blueprint」で、ページ運用や広告配信に関するノウハウを公開しています。

▲Facebook Blueprintのホームページより。目的に沿って12コースに分かれているほか、初級~上級別でもノウハウを得ることができる
一方「Instagram」は写真がメインなので、複数の国・地域が対象でも同一アカウントで発信するケースが多いようです。
注意点は、ページ上部のプロフィール欄には自社公式サイトのURLを載せられますが、1つ1つの投稿からは外部リンクを貼れませんので、店舗情報や販売サイトへの導入といった使い方はできません。
一方、それなりに来訪者数がある観光地の場合、現地に訪れたユーザーが撮影、投稿した写真を活用できるメリットがあります。日本政府観光局(JNTO)の「@visitjapanjp」は運営者がインスタ映えする写真を撮影して投稿しなくても、この方法により自らのアカウントのコンテンツを充実させています。
JNTOは「Facebook」「Instagram」の効果的な情報発信をするための「デジタルマーケティング ガイドライン集」を公開しているので、「Instagram」公式の「Instagram Business」と合わせて、参考にしてみてください。
お店や観光施設は「トリップアドバイザー」「Googleマイビジネス」も
「トリップアドバイザー」は旅行者が感想や評点を投稿するクチコミメディアですが、お店や観光施設の運営者の方には自社施設に関するページの管理者となって、写真や営業時間などの情報を自ら投稿することができます。世界中の旅行者が利用するメディアですので28もの言語でサービス提供されており、1つのアカウントで複数の言語で情報掲載が可能です。詳しい活用法は同社の「トリップアドバイザー活用ガイドブック」をご覧ください。
最近、注目度が上がっている「Googleマイビジネス」では、Google検索結果の画面右に出てくる地図や住所と一緒に自社の情報を表示できます。「Google マップ」に登録されている施設は、キーワード検索と一致する度に表示されるので、能動的に情報を探している人の目に触れやすく、さらにスマートフォンではすべての検索結果に優先して最上部に表示されます。訪日旅行リピーターが増え、旅ナカのスマートフォン検索が増える傾向のなか、インバウンドに注力する宿泊施設では近年これを最重要と考える経営者も多く、京都市DMOでは加盟者が「Googleマイビジネス」に自ら公式コンテンツを投入している割合を重要指標として見ているそうです。
参考記事:京都市内観光関連事業のGoogleマイビジネス活用を促進し、マーケティング活動を支援します、Googleマイビジネス登録・運用支援ご希望社の受付について(募集期間延長中)

▲Googleマイビジネスのホームページより
これらのサービスを公式アカウントとして活用したい場合、まず自社の施設がすでに掲載されていないかどうかを確認します。
「Googleマイビジネス」の場合はGoogleによる「Google マップ」への地点登録、「Facebook」や「トリップアドバイザー」はユーザーの投稿により、自社として何もしていなくても既にページが存在していることがあります。その場合「トリップアドバイザー」では名称の隣に「オーナー未登録」と表記され、ページの最下部に「この施設を所有または管理していますか?オーナーとして登録されると、口コミへの返信や貴施設のプロフィールの更新など、活用の幅がぐんと広がります。登録は無料です」という説明と共に登録手続きへのリンクがあります。オーナーになると、これまでに投稿されている写真やレビューごとページを引き継ぐことができます。
萩本良秀 Hagimoto Yoshihide
DeepJapan エグゼクティブ・ディレクター
リクルート『ISIZEじゃらん (現じゃらんnet)』『じゃらんガイドブック』編集長、ぴあ『@ぴあ』編集長、ヤフー『Yahoo!ニュース』プロデューサーなどを経て、2013年より数百人の日本在住多国籍メンバーが日本旅行のアドバイスを投稿するサイト「DeepJapan」エグゼクティブ・ディレクターに就任。ほかに関東観光広域連携事業推進協議会メディア・ディレクター、全国通訳案内士 (英語)、国内旅行業務取扱管理者、山梨県観光部公認やまなし大使もつとめる。