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【第4回】単に日本語サイトの直訳では通じない、中国語サイトの翻訳を考える / 講師 萩本良秀

初めての場所や体験を好む台湾人に、必要な情報を伝える翻訳原稿テクニック


今回からは、自社の中国語(繁体字)サイトを制作する際の留意点について確認していきます。日本語サイトと中国語サイトの違いは言語ですが、単に日本語原稿を中国語に正確に翻訳しただけでは意味が伝わらなかったり、行きたい場所にたどり着くための情報として不十分だったり、ということがあります。


台湾人旅行者は何度もリピーターとして訪れているから日本の土地勘がある人が多いのですが、一方、次に日本でどこに行きたいかと問うと、「行ったことがない所」「外国人があまりいない所」という人が多いのも特徴です。よく知っている日本の、知らない場所や体験に誘うために、特に必要な情報とその翻訳のポイントについて考えてみましょう。


外国人がわかる地名を選ぶ。最寄り駅までのアクセスも書く


私たちが海外旅行でラスベガスに行った時、自分がいまネバダ州にいると意識していない人がほとんどではないでしょうか?


私もこの前、シアトルからのゲストをガイドしていて「From Seattle, Washington」とお店の人に話しているのを聞いて「そうか、シアトルってワシントン州だったのか」と改めて気づいたりします。


同じように、金沢にいる外国人がいま石川県にいる、神戸にいる外国人が兵庫県にいる、とわかっていないのではないでしょうか。


全国に店舗を持つチェーンストアのサイトで日本語サイトの「店舗情報」をそのまま翻訳しているのを見かけます。その多くがまず地図から「関東」や「中部」をクリックして、次の階層で東京や名古屋のお店のリストを探す形式ですが、日本人には何でもないこの選択が外国人には無理があります。


私が「じゃらんnet」初代編集長の初期、箱根に予約は入るのに伊豆は入らない時期があったのですが、実は伊豆も関東と思いこんでいる多くのユーザーが日本地図から「東海>静岡県>南伊豆」などとクリックしなくてはいけないことがわからなかったのです。


日本人でもそうなら、外国人に「甲信越>山梨県>富士山」とクリックして探させるのは無理があります。地名を使うときは地方名や県名は避け、街や駅などピンポイントできる明確なランドマークを利用するといいでしょう。


日本の11区分

▲11区分は気象庁による、地方季節予報で用いられている。日本人でも、自分の在住地域以外はわかりにくい

交通アクセスも、日本人向けの書き方では不十分な例があります。


「新宿から中央高速で 95 分」。これは、長野県にあるホテルの例ですが、ほとんどの外国人が電車やバスで来るので鉄道は必須です。


「河口湖駅からバス 30 分」。これは西湖の説明で日本人には通じても、東京から河口湖までどう行くかわからない外国人旅行者もいます。


「バスタ新宿から中央高速バスで河口湖駅まで1時間45分」と書き、さらに「河口湖駅から河口湖周遊バス『グリーンライン』で根場民宿下車(37分)」と、バスの路線図を参照して広い西湖で富士山と湖の絶景ポイントが間近なバス停を書けば親切です。


このように日本語サイトでは最寄り駅からの交通しか書いていない場合が多いのですが、外国人がわかる駅を基点として書きましょう。


たとえば、京都府綾部市にある宿や観光施設であれば、「綾部駅からあやばす上林線で大町ターミナル下車」だけでなく、「JR京都駅から山陰本線特急『きのさき』『はしだて』で綾部駅下車(65分)。あやばす上林線に乗り換え大町ターミナル下車(32分)」とすれば、京都からのおおよその距離感がわかるでしょう。


京都旅行の際に天橋立まで行ったタクシー料金が高くて驚いた、というエピソードが本サイトでも紹介されていますが、日本ツウの台湾人でも時間や距離、移動手段をセットで情報提供しないと、そういうことも起こり得ます。


日本人には常識の歴史や文化、定番商品も追加で説明が必要


同じように、歴史や文化についても、日本人の知識の前提を書いてある日本語原稿があります。


「大阪城ゆかりの秀吉が…」は「大阪城ゆかりの16世紀の将軍、豊臣秀吉が」とするべきです。江戸時代は「江戶時代」、英語なら「Edo Era」と書けば間違っていませんが、いい翻訳者はそれを16世紀とか18世紀とか調べて書きます。そうすると200年くらい前か4000年くらい前か、自分の国だったらどんな時代かといったことがわかります。


モノ消費からコト消費へと言われるように、日本文化の体験プログラムが人気ですが、「風鈴づくり」「金魚すくい」といった名称だけでは、初めての外国人には何のことかわからないでしょう。「風鈴とは金属やガラス製の鈴で、縁側に吊り下げてその音色に涼を感じる風流なアイテムである」という、元々の体験プログラム説明の日本語原稿にない風鈴の説明を足してから、翻訳に出すべきです。


日本人におなじみの定番商品名は、その直訳では意味不明になるものがあります。「亀田の柿の種わさび 6 袋詰」は、そのまま直訳するとネイティブには「わさび6本」という意味になってしまいます。「わさび6袋詰」ではなく「わさび味のおかき6袋詰」が正しい構文ですが、「柿の種」=おかきと誰もがわかる日本人向けには、翻訳に必要なそもそもの商品属性が商品名の文字列に含まれないことが多いのです。

直訳では内容が伝わりにくい商品名の一例


ドラッグストアで人気の「ライオン 休足時間」は、中国語では「休足時間足部清涼舒緩貼片」、英語だと「Kyusokujikan leg cooling sheets」というように、「足に貼って」「冷ます」「シート」という商品属性を付記して表現されています。英語だと足首から上か下に貼るかで「leg」か「foot」かも違うので、単に日本語原稿だけ見るのではなく、商品パッケージ画像などを添えて翻訳を依頼するとよいです。


元の日本語原稿にはない、必要な補足説明を補ってから翻訳する


多言語サイトを持つ会社の現場でも、翻訳会社に依頼した翻訳がネイティブの社員に見せたら意味不明といわれた、というケースをよく聞きます。


以上見てきたように、日本語原稿を直訳して伝わらない表記になるのは、地名や歴史、商品など日本人の知識では当たり前の情報が原文では割愛されているのが主な要因です。

まず外国人の知識でわかるか、わからないかを考えて、必要に応じてオリジナルの商品名や原稿にない説明を日本語原稿に足すといった、翻訳を依頼する前のひと手間が大事なのです。

萩本良秀 Hagimoto Yoshihide

DeepJapan エグゼクティブ・ディレクター

リクルート『ISIZEじゃらん (現じゃらんnet)』『じゃらんガイドブック』編集長、ぴあ『@ぴあ』編集長、ヤフー『Yahoo!ニュース』プロデューサーなどを経て、2013年より数百人の日本在住多国籍メンバーが日本旅行のアドバイスを投稿するサイト「DeepJapan」エグゼクティブ・ディレクターに就任。ほかに関東観光広域連携事業推進協議会メディア・ディレクター、全国通訳案内士 (英語)、国内旅行業務取扱管理者、山梨県観光部公認やまなし大使もつとめる。


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