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30代以上が熱烈に求めているのは、観光客の少ない日本の「穴場」情報です / 【第2回】 黄 昱毓

日本と台湾をつなぐ架け橋として、日本に住み、活躍する各界の台湾人に、「台湾人が喜ぶ日本観光」について語っていただくインタビュー連載。第2回は、弁護士として台湾・中国関連案に携わり、自身の経験をもとに執筆活動も行う、黄 昱毓(コウ ユウユウ)さんです。

黄 昱毓 Huang YuYu

弁護士法人 淀屋橋・山上合同 東京事務所所属

1981年、台湾台北市生まれ。台湾と中国の弁護士資格を有する。台湾で弁護士として執務後、2012年に来日。大阪大学大学院留学を経て現法律事務所に入所し、台湾・中国関連案件を担当する。弁護士キャリアを中断して訪れたフィリピン、アメリカ、オーストラリアでのワーキングホリデーと、日本での生活体験記を’17年『小律師的逃亡日記』(四塊玉文創)として台湾で出版。’19年1月には『跟著律師到日本買房子(弁護士に学ぶ日本不動産購入ガイド)』(四塊玉文創)、同10月には『時間感手帳的誕生』(字遊出版)を上梓するなど、専門知識と多彩な海外経験を活かした執筆活動も行っている。

初めて行った京都で紅葉に魅了された


――黄さんが初めて行った日本旅行は、いつ、どこでしたか?


黄 昱毓(以下「黄」):10年以上前、学生の時に初めて友人たちと日本旅行をしました。個人旅行で京都に行ったんですけど、ちょうど紅葉が見頃で、もう、本当にきれいで……!もともと歴史を感じられる場所が好きなので、それ以来、京都は大好きですね。今年、日本人の男性と結婚したんですが、結婚式もわざわざ京都で挙げたくらいです。ただ……最近は観光客が本当に多くて、写真を撮るのもひと苦労でした。人が多すぎて。

▲日本が誇る観光地・京都は、春の桜、秋の紅葉シーズンは国内外の観光客であふれかえる

――ご結婚おめでとうございます!では、本格的に日本に住み始めてからはどれくらいですか?


黄:7年です。日本語学校、大学院進学、就職と、ずっと大阪にいました。結婚を機に東京に引っ越してきたのはごく最近です。


他の観光客が行かない所へ――日本の穴場情報への強烈な関心


――台湾の人から、日本の観光情報を尋ねられることは多いですか?


黄:多いですよ。同世代の友人からがほとんどで、毎月のように相談されます。台湾には日本の観光情報が充実しているのに、台湾では知られていない「穴場」を、みんな熱烈に知りたがっていますよ。静かで、外国人観光客が少ない、リラックスできる場所をよく訊かれます。


――ということは、みなさんリピーターなんですか?


黄:そうです。有名な観光地には若いうちに安い個人旅行で来ていて、「一回行ったらもう十分」という感じですね。30代の今では、経済的に余裕もでてきて、少し高くてもいいから良質な時間を過ごしたいという人が多いです。

台湾人にとっての「日本」は、身近で特別な存在


――台湾の方は、日本旅行にどんなものを求めているんでしょう?


黄:私は若い頃からトルコ、インド、オーストラリアなど色々な国へ旅をしてきたのですが、他の国と比べて、やはり台湾人にとっての日本は特別な国だと思います。子供の頃から日本のドラマなどに慣れ親しんでいますし、私の祖父母は日本時代の教育を受けていて日本語も話せます。台湾の人は日本に対して親近感や良いイメージが当たり前にあるので、海外旅行の選択肢としては非常に自然というか、「やっぱり一度はこの目で見ておこう」という感じで、気軽に来ていますよね。


日本は治安が良く、サービスも良いということは知っていますから、安心してくつろげる旅ができる場所を求めて日本に来ているように思います。台湾では見られない美しい自然や、静かな田舎を体験したいという人は多いですよ。


日本ならではの風情が体験できる温泉町と旅館文化


――30代という比較的若い世代でも「静けさ」を求めて日本に来るんですか?


黄:はい。私自身も地方の温泉地は大好きです。最近までずっと大阪に住んでいたので、行ったことがあるのは関西が多いですが、城崎温泉は大好きです。それから、歴史を感じさせるような伝統的な商店街も大好きです。城崎温泉の近くの町とか、金沢とか、すごく雰囲気がいいんですよ。

▲兵庫県にある城崎温泉は、平安時代以前から温泉郷として親しまれている

――台湾にも温泉はたくさんありますよね?


黄:日本の温泉は台湾の温泉とは全然違いますよ!台湾の露天風呂は水着を着ないと入れませんし。日本式の旅館というのも台湾にはありません。若い頃は高くて泊まれなかった旅館ですが、最近はよく行きます。旅館のごはんもおいしいですしね。


――多くの日本人はグルメを求めて台湾に旅行に行くのに、台湾の人はグルメを求めて日本に来るんですか?


黄:日本の食事は、値段に見合った品質のものだという安心感があるんです。日本でこそ食べられる質の高い食材や料理なら、多少高くても気にしませんね、今は。台湾だと、高いものイコール品質の良いものとは必ずしも言えませんから。


――治安・サービス・品質など、日本に対する確かな信頼感があるんですね。


交通費が台湾より高い日本旅行、車利用の実態


――日本旅行についてのアドバイスを友人にして、失敗したご経験はありますか?


黄:移動時の交通費が想像以上に高かったことでしょうか。京都旅行を計画していた友人に天橋立をすすめたんですけど、タクシーで行ったらすごい金額になってしまったそうで、現地から「こんな料金なんだけど、本当!?」って電話がかかってきたことがありました。

▲京都府北部に位置する、日本三景のひとつである天橋立。京都駅から車で約1時間40分かかる

――交通費は台湾より高いですよね。電車も、車も。


黄:ええ。最近私や友人が行きたい場所は田舎が多いので、交通の便がよくなくて。私は、夫が車を運転してくれるので気がつかなかったんですが、タクシーだとかなり高くなっちゃうんですよね。それでもみんな、車でないと行けないようなところに行きたいので。


――日本旅行の時にレンタカーを運転する台湾のご友人は多いですか?


黄:うーん、北海道ならレンタカーも使っているようですね。その他の場所は、やはり自分で運転するのは難しいようです。


ネット通販の発達で減ってきた買い物ニーズ。不動産購入は投資目的とシビアな視点


――以前と最近で、ご友人から尋ねられる「日本旅行」の内容に変化はありますか?


黄:買い物に関する質問やリクエストは大きく減りましたね。台湾の人は日本の商品が大好きなので、昔は色々なものを帰省時に買ってくるように頼まれたものですが、最近は少ないです。これは、楽天市場などの日本のネット通販サイトで台湾への発送に対応しているところが増えたからでしょう。


台湾人が日本で買う商品は、日本製品だけではなくて輸入品のこともあります。関税の関係で台湾だと高い外国製品を日本で買います。ル・クルーゼのお鍋とか。ただ、価格的に明確なメリットがなければ、わざわざデパートや商業施設には行きません。アウトレットモールは別として、おしゃれなショッピングモールは台湾にもありますから。

▲ホーロー製の鍋が人気の、フランスのキッチンウェアブランド「ル・クルーゼ」。22センチの鍋が、日本では3万6,300円(税込み)、台湾では1万3,000元(約4万5,000円)※編集部調べ

――日本ならではの体験やグルメには安心してお金を遣うけれど、ショッピングに関してはシビアに価格を見ているんですね。黄さんは台湾で日本の不動産購入に関する本も出されています。日本で不動産を買って住みたいという台湾の人も多いんですか?


黄:今年(2019年)初めに『跟著律師到日本買房子(弁護士に学ぶ日本不動産購入ガイド)』という本を台湾で出版しました。不動産売買や運用にあたっての日台の法律の違いやその手続きを紹介するものです。私が実際に相談を受けるお客さまは投資目的がほとんどですね、自分で住むのではなくて。あくまで投資資源として日本の不動産を評価していると思います。


日本で購入した不動産は、賃貸や民泊用物件として台湾人オーナーが台湾人に貸すことが多いそうです。台湾の法律では大家さんの権利が日本より大きいんです。一方、日本では借り手のほうが手厚く保護されていますので、台湾で不動産投資経験があっても、日本の状況をきちんと理解しないとトラブルの元になってしまうんですね。


――なるほど。遊びに来る、投資する、住む、ではやはり全然見え方が違うんでしょうね。

▲ 黄さんの著書『跟著律師到日本買房子』。日本での不動産購入における法手続きについて、図表を交えながらわかりやすく解説

きめ細やかだが、柔軟性が足りない日本のサービス


――日本での生活のなかで、不満や物足りなさを感じることはありますか?


黄:全体的に物価が高いというのはしみじみ感じますね。旅行で来日するだけなら気にならないとは思いますが。旅行で訪日した友人は、良いホテルに泊まり、特別なグルメを思い切り楽しんだりしていますけど、ずっと住んでいるとそういう派手な消費を毎日というわけにはいきませんね(笑)。


台湾だと日本と同価格帯の飲食店のほか、非常に安くて手軽な外食も豊富ですから、その点は台湾のほうがいいなあと思うこともあります。台湾と違って「ちょっとだけ食べられる屋台」のようなものは、日本は種類が少ないですよね。飲食店の衛生管理が厳しいからなんでしょうけど。

あと、日本のサービスはとてもきめ細やかなんですが、マニュアルから外れたリクエストに対する柔軟性は台湾より低いかもしれません。たとえば、食事の後に薬を飲みたいからぬるま湯が欲しいと頼んで、断られてしまったことがあります。

日本でしか見られない景色と体験を楽しみたい


――黄さんが最近行って印象的だった場所と、今後行ってみたい観光地を教えてください。


黄:やはり関西地方なんですが、京都府の中央に位置する美山町は本当にすてきでした!伝統的な農家の家屋(かわぶき民家)が残っていて、中に泊まることもできるんですよ。こんな景色は台湾では絶対に見られませんから、楽しかったですね。

▲美山町を代表する観光スポット「かやぶきの里」では、かやぶきの民家が数多く残り、観光客を魅了する

東京に来て間もないので、関東地方の有名な観光地はまだ全然行けていなくて。台湾人に定番の箱根、人気がある軽井沢などを訪ねてみたいと思っています。



文・人物撮影 松浦優子



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