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動画インフルエンサー「網紅(ワンホン)」の発信する日本の姿は、どんどんディープになっています / 【第6回】呉 廷中

日本と台湾をつなぐ架け橋として、日本に住み、活躍する各界の台湾人に、「台湾人が喜ぶ日本観光」について語っていただくインタビュー連載。第6回は、日本で台湾関連のイベントの開催や、台湾人インフルエンサーのマネジメントなど、日台交流のビジネスを幅広く展開する呉 廷中(ゴ テイチュウ)さんです。


呉 廷中 Wu TingChung (David)

TOMOTOMO代表取締役・Future Film Development Association日本代表

1988年生まれ、台湾桃園市出身。2014年に来日、日本語学校で学んだ後に日本企業に就職、その後2016年に日台交流の架け橋となりたいとの思いから、「友」をキーワードとして名づけた株式会社TOMOTOMOを創業する。現在は同社の代表取締役として日台交流に関わるイベントの企画運営、広告代理、エンターテインメント人材やネットインフルエンサーのマネジメント業務などを手掛ける。この他、Taiwan Future Film Development Association(台湾未来映像発展協会:TFFDA)の日本代表として、台湾の若手映像作家・監督の作品を日本で上映・紹介している。 TOMOTOMO:https://www.tomoxtomo.com/


子供の頃から慣れ親しんだ国・日本へ語学留学、そして起業


――呉さんの初めての日本旅行はいつでしたか?


呉廷中(以下呉):記憶に残っている範囲では、たぶん小学生くらいの頃だったと思います。家族旅行で色々な国に行きましたが、両親が一番好きだったのは日本だったので、日本に来た回数が一番多いです。


その当時は旅行会社のツアーを利用する形だったと思います。東京や大阪など有名な観光地は一通り行きましたし、両親が温泉好きだったこともあって、名湯といわれる場所はかなり訪れていると思います。


――自分自身で計画を立てて初めて日本に旅行に来たこともありますか?

呉:初めての個人旅行は大学生の時ですね。熊本など、九州を回るプランを自分で作って旅行に来ました。

▲台湾での大学生時代に、初めて訪れた阿蘇山にて

――ものすごいバイタリティですね。現在もとてもお忙しくいらっしゃいますが、日本で旅行はされますか?


呉:そうですね。台湾にいる時から日本のドラマや音楽、それにいわゆる伝統の「和文化」にもハマっていました。元々ファッションに興味があって、やはり日本のスタイルが好きです。大学時代には既にインターネットはありましたから、ネットで調べることもできましたし、日本のファッション誌は台湾でも入手できます。センスを磨くための参考にしていたのは「Men’s JOKER」や「MEN’S NON-NO」といった雑誌です。


日本のファッションアイテムを買うために日本に来ることも多かったです。東京の代官山とか、表参道のお店を回ったりして。


――その後、日本には留学で来られたんですよね。


呉:はい、2014年4月に語学留学のために来日し、1年間日本語を学びました。その後は仕事を始めて、起業して、今に至ります。


――留学中にもあちこち旅行に行かれたりしましたか?


呉:学校は結構忙しかったのでそんなには。ただ、留学生の頃から日台交流会を主催していて、たくさんの友人・知人ができまして、その仲間で遊びに出かけるのは、鎌倉など、比較的東京に近い場所が多かったですね。


でもまあ、少しずつ旅行には行っていて、日本でまだ行けていない場所は……四国と、長崎県と、秋田県かな。それ以外の都道府県には行っていると思います。

▲家族と訪れた北海道・小樽

――日本全国をほとんど制覇しているじゃないですか(笑)。


呉:いえ、仕事を始めたらすごく忙しくて、なかなか未踏の地が減らないです(笑)。


日本は色々な旅の目的に対応できるところがいい


――呉さんからみて、台湾の方は日本旅行に何を求めていると感じられますか?


呉:日本のいいところは色々なタイプの旅行に対応できるリソースを持っていることだと思います。子供の頃に行った温泉もそうですし、ショッピング、グルメ、文化探訪など、日本は多様な楽しみ方ができる場所だと思いますね。


――現在日本在住の呉さんに、台湾のご家族や友人から日本旅行の相談を受けることはありますか?


呉:それが、意外と少ないんですよね。日本旅行の目的はさまざまで、僕が全てを知っている訳ではないですし、若い人はネットでどんどん情報を得て、自分で行き先やプランを決めていると思います。

たずねられるとしても、せいぜい1ヶ月に1回くらいでしょうか。台湾人に知られていない穴場の美味しい店はないのかとか。あとは、交通関係が多いですね。例えば、ディズニーランドに行くのに便利なホテルはどの辺りかとか。土地勘がないと距離や所要時間の感じがつかみにくいのでしょう。どのホテルがいいかというのも聞かれますけど……僕は自宅がある東京でホテルに泊まることはないのでわからなくて(笑)。


――現地在住より、むしろ台湾にいる人たちの方が情報通だったりすることもありますよね。


呉:はい。今は本当にネット上の情報が充実しています。YouTubeなどにはたくさんの紹介動画がありますよ。「網紅(ワンホン:動画媒体をメインとして情報発信をするインフルエンサー)」の情報発信力と影響力は本当に大きいと思います。旅行地とグルメ情報は最も人気のテーマなのでほとんどの人が扱っていますが、中にはもう少し深い日本文化や、日本での生活などを手厚く発信している人もいます。


僕の会社では台湾人インフルエンサーのマネジメント業務も行っていますが、日本在住の台湾人インフルエンサーだけで10人くらい知っていますし、台湾在住となれば何百人もの人が日本を紹介していますよ。


――日本旅行を紹介している台湾人インフルエンサーはそんなにいるんですか!?


呉:はい、本当に多いです。若い人はほとんど「網紅(ワンホン)」発信の情報を何らかの参考にしていると思いますね。アクセスされているSNSは年代によっても違っていて、YouTube視聴者は20~30代、Instagramは20代で、Facebookは30代以上の人が多くリーチしているようです。


都会の喧噪から離れ、日本の歴史にふれる旅で感動


――呉さんにとって印象的だった日本の観光地を教えてください。


呉:最近一番感動したのは、和歌山県の高野山奥の院ですね。一人で訪れたんですが、名だたる戦国武将の墓がずらりと並んでいて「うわぁ……!」となりました。歴史上の有名人が目の前に「いる」訳じゃないですか。感動しました。その感動を残したくて、一人でナレーションを入れながら動画まで撮ってしまいました。

▲高野山奥の院の「一の橋」から「弘法大師御廟」の2㎞の参道には、織田信長や石田三成などの戦国武将や、親鸞などの数々の歴史的人物の墓が建つ。SilsilviaによるPixabayからの画像

――台湾の方って日本の戦国武将に詳しいんですか?


呉:割と知っていますよ。僕も、日本のゲーム「戦国BASARA」などを通じて、有名な戦国武将の名前や時代背景・関係は知っていました。高野山に行ったのは大河ドラマ「真田丸」を観た後でしたね。ドラマ「半沢直樹」の主役・堺雅人さんが出ているというので観てみたらおもしろかったんです。


この時は九度山にも行って、高野山に行って。一人で色々な歴史的な場所を回りました。僕自身は日本の歴史に特に詳しい訳ではなくて、もっと詳しい台湾人はたくさんいますよ。

▲高野山の入り口に位置する九度山町には、かつて真田幸村が屋敷を構えた。写真は町内にある勝利寺前

――東京に住んでいてファッションに敏感な呉さんですが、旅行先は何というか、渋いですね。


呉:ずっと東京に住んでいますから、旅行でわざわざ都市に行きたいとは思わないんですよ。京都も歴史的な街ですが、行くなら街なかじゃなくて嵐山。ネオンがギラギラした繁華街とか、全然興味ないです。街はつまらない(笑)。


仲間とかけがえのない時間を過ごせることが、旅では一番大事


――呉さんの周りで、特に人気がある日本観光の季節はいつですか?

呉:やっぱり、紅葉の季節ですね。僕は日本に来てから2~3年で、桜は見飽きちゃいましたけど(笑)。


――えっ、そうなんですか。


呉:僕の場合、初めて行くすてきな場所というのももちろん重要ではあるんですが、それよりもむしろ、誰と行ってどんな時間を過ごすかの方を大事にしているんです。気の置けない仲間といい思い出を作りたい。だから、混んでいなくてゆっくり過ごせる場所であることが必須です。僕にとっては。


――人が多いところはあえて避けるという?


呉:そうです。周りに他の人がいない方がゆっくりできるじゃないですか。だから僕が好きな旅行先はみんな交通の便が悪いかもしれません。日本の温泉は家族旅行などであちこち行っていますが、一番好きなのは黒川温泉(熊本県阿蘇郡)です。バスが1日に2本とかしかなくて、山の中にひっそりあるんですよ。

▲呉さんが今まで訪れた日本の温泉のなかで一番好きだという黒川温泉

他には、白馬の青鬼(あおに:長野県北安曇郡白馬村)も好きです。岐阜県の白川郷のような伝統的な家屋があって、でもずっとこぢんまりとした山村です。

▲棚田が美しい青鬼。かつては茅葺の家屋の集落だった

――どちらかというと海よりも山派なんでしょうか?


呉:そうですね。台湾にいた頃はキャンプもしていましたし。秋や冬など寒い時期に山に行くのが好きです。周りに誰もいない自然の中で、静かな夜に温かい物を食べて、仲がいい友達と色々語り合うのはかけがえのない思い出になります。何を食べるかとか、何を買うかじゃなくて、誰と一緒にいたかで旅の楽しさって決まると思うんです。モノじゃなくて、人生の記念になる、思い出に残ることが一番大事だと考えています。

▲日本で出会った仲間たちとのスキー旅行

――他に好きな場所はありますか?


呉:メジャーなところですけど、那須高原も好きです。やはりなるべく観光客が少ない時期を狙って行きますね。


スケール感が思ったより小さい場所にがっかり


――では、行ってみたけれど期待通りではなくてがっかりした経験はありますか?


呉:ショックだったのは日光の華厳の滝(栃木県日光市)!なんというか……もっと大きな滝だと思ってたんですよ。見てみたら「ちっさ!!!」って(笑)。他にもいくつかありますけど、がっかりポイントはだいたい「想像よりスケールが小さかった」ことが多い気がしますね。


――他に、日本の観光地などで不満などはありますか?


呉:ゴミ箱が少ないという点ですかね。それが日本の街の清潔さにつながっているのはわかっているんですが、やはり少し不便です。


もう一つは、洋服を買うと、店員さんが袋を店の出口まで持ってついてきてくれるじゃないですか。あれがどうも……気まずいというか、いまだに慣れないですね。台湾にはそういう習慣はないので。


――今後は日本でどんな場所に行ってみたいですか?


呉:まだ行ったことのない四国には近いうちに行きたいです。他には、テレビで観たり、出張で訪れたりなどがきっかけで興味が湧いた場所に行ってみたいと思っています。


文・撮影 松浦優子

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