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【第3回】台湾人の信仰心を考える / 講師 片倉佳史

▲台湾各地で見られる廟。訪れれば、必ずや熱心に手を合わせる人々を見かけるはず。(大甲・鎮瀾宮)
台湾の宗教事情は複雑で、様々な信仰が入り混じり、しかも、それが仲良く共存しています。外国人には掴みにくい部分も多いのですが、興味が尽きないところでもあります。
実際、台湾ではどこに行っても「廟」を目にします。これはいわゆる道教寺院のことで、都市部はもちろん、どんなに辺鄙な場所に行っても、廟を見かけないということはまずありません。まさに、人がいれば必ずや信仰があり、廟があるといった状況です。
筆者も見知らぬ土地に出向く際には廟を訪れます。そして、土地に根付き、人々を護ってきた神様たちに手を合わせ、道中の安全と台湾社会の平安を祈ります。
冒頭で述べたように、台湾の宗教事情はかなり複雑です。端的に言えば、道教をベースに仏教やキリスト教が混在していると考えれば分かりやすいでしょう。基盤としては道教が定着し、そこには祖先崇拝やアミニズムが深く絡んできます。また、いわゆる新興宗教もそれなりに勢力があり、これは仏教系が大半を占めます。
信徒の数から見れば、道教が圧倒的ですが、道徳観念としては儒教も色濃く影を落としています。さらに、庶民信仰としては、歴史上の人物や動植物、巨木、自然石、山岳、さらには日本統治時代の石碑なども、ご利益さえあれば、信仰の対象になっていきます。
では、台湾に廟はいくつあるのか。これも気になるところです。確固たる統計はありませんが、台湾の人々が篤く慕う「媽祖」という女神については、その媽祖を祀る廟だけで3千を超えています。祭神についても、ある程度の勢力を持つものだけでも、その数は5百近いと言われています。
台湾の人々が日本を訪れる際、神社仏閣の参拝をコースに盛り込んでいることが多々見られます。これは信仰文化への関心が高いことはもちろん、訪れた先々の神様に敬意を表し、手を合わせてご挨拶することに意義を感じるからだと考えると、台湾の人々の性格、人柄が少し理解できそうな気がしてきますね。
片倉佳史 Katakura Yoshifumi
武蔵野大学客員教授
台湾在住作家
1969年、神奈川県生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、出版社勤務を経て、’97年に台湾へ渡る。台湾の地理、歴史、建築、文化、鉄道、現地事情などについての執筆・撮影のほか、年に40回ほど講演活動も行なう。『台北・歴史建築探訪~日本が遺した建築遺産を歩く』『古写真が語る台湾 日本統治時代の50年』『旅の指さし会話帳・台湾』ほか著書多数。最新刊の『台湾 旅人地図帳 ―台湾在住作家が手がけた究極の散策ガイド』(片倉佳史・片倉真理著)では、台北・高雄などの主要都市以外にも、まだ日本人には知られていない地方都市や離島など約80ものエリアやスポットを、写真とともにオールカラーで紹介する。
公式ウェブサイト「台湾特捜百貨店」:http://katakura.net/
ツイッターアカウント:https://twitter.com/katakura_nwo