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【第1回】ショッピングツーリズムの基礎と重要性 / 講師 新津研一

1. 日本と世界のショッピングツーリズム


日本のインバウンド市場は、ここ数年で飛躍的な成長を遂げています。中でも有効な外客誘致策として位置づけられているのが「ショッピングツーリズム」。連載第1回目は、ショッピングツーリズムに取り組むうえで押さえておきたい基礎知識や重要性を解説していきます。


拡大する国際旅行者数


1950年から2020年の予測に至るまで、世界で海外旅行を楽しむ国際旅行者数は毎年3%前後の増加が継続しています(グラフ1)。2008年の調査では、2020年には14億人近い人々が世界を旅すると言われていましたが、予想は前倒しとなり、2018年にその数を達成しました。しかも前年から6%増です。


その海外旅行者を巡って世界中の国々が争っています。中でも有効とされる外客誘致策の一つが「ショッピング」であり、観光資源の乏しい国でも取り組めることから、さまざまな国が「ショッピングツーリズム」のプロモーションやブランディングを展開しています。日本はアジアに隣接した有利な立地環境にありますが、激しい国際競争にさらされていることも念頭に置いておく必要があります。


グラフ1: 国際観光客数の推移


日本は観光発展途上国?


日本では2013年以降、訪日ビザ要件の緩和、免税制度改正などの政府施作により、訪日観光客数は急伸しています(グラフ2)。あなたも毎日のように街で訪日ゲストとすれ違い、日本には世界中から観光客が殺到していると感じているのではないでしょうか。しかし、2018年のデータによると訪日旅行者入国数は、世界ランキングで12位、アジア圏では3位にとどまり、中国やタイの後塵を拝しています。ショッピングツーリズムにおいても、世界の人気観光地ランキングで1位の京都さえも、その評価項目の1つであるショッピングに関しては低位にとどまっています。この数字を見る限り、日本は観光発展途上国と言わざるを得ません。


グラフ2: 年別-訪日外客数の推移

観光先進国が展開するショッピングツーリズム


シンガポールでは20年以上前から、「ショッピング」を観光の目玉として打ち出したインバウンドプロモーションを行っています。強化キャンペーン「グレートシンガポールセール」は、毎年8週間にわたって開催されています。


また、中東のドバイでも毎年「ドバイショッピングフェスティバル」が実施され、世界最大のショッピングイベントとしてヨーロッパやロシア、アジアなどから多数のゲストが来訪。開催期間1カ月で3000億円を超える経済効果を上げています。


このような想像を絶するような規模の取り組みは、すでに世界中で行われています。


日本が展開するショッピングツーリズム


日本では、2013年から本格的にショッピングツーリズムに着手。「ジャパンショッピングツーリズム協会」が設立され、民間企業、商店街、大型商業施設などが連携し、日本のショッピングの素晴らしさを海外に伝える第1回「ジャパンショッピングフェスティバル」が開催されました。


そして2014年には外国人旅行者向けの消費税免税制度がスタート。この制度は大きな効果をあげ、ショッピング消費はわずか3年間で1兆円の売上拡大に貢献することになりました。これを受け、2015年以降も消費税免税制度は毎年、改正・拡充を進めています。


このようにショッピングツーリズムとは、官民が連携し、北海道から沖縄までオールジャパンで取り組んでいくことが重要です。


2.ショッピングツーリズムの重要性


定量的な重要性 〜経済的な波及効果〜


2018年の訪日ゲストの総消費額は4兆5189億円と過去最高額となり、その内訳ではショッピングが約34.9%、飲食費は約21.6%を占めます(グラフ3)。つまり訪日ゲストは、ショッピングセンターや商店街で6割近いお金を消費しているのです。域内消費・経済効果拡大には、商店街を巻き込んだショッピング消費の促進が重要な要素と言えます。


グラフ3: 費目別の1人当たりの旅行消費額

また、台湾人ゲストの一人当たりの消費単価を種目別に見ると、買い物と飲食の合計額は、宿泊・交通を上回っています(グラフ3)。宿泊・交通の単価については、滞在期間や移動距離を伸ばせば増やすことができますが、大きな工夫が必要です。


それに比べると、ショッピングの際に店頭で、購入される個数や単価を増やしてもらえるよう訪日ゲストに働きかけることは難しいことではありません。ショッピングには、消費単価を増やす可能性も秘められているのです。


小売業の優位性の一つが、事業者の裾野の広さです。日本には80万店を超える小売店が存在し、生産、物流、販売といったさまざまな事業者が関わっています。小売業で売上が伸びることは、多くの事業者に経済効果があり、ひいては地域の活性化にもつながるでしょう。


定性的な重要性 〜訪日旅行3つの価値を体験〜


観光庁は海外に対して日本のプロモーションを行う際、「訪日旅行3つの価値」というコンセプトを提示しています。このコンセプトは外国人有識者や訪日ゲストに、「日本に感じる最も魅力的なもの」をヒアリングした結果がベースとなっています。


「3つの価値」とは、日本人であり、あなた自身であると言えます。そして、ショッピングを通じて、訪日ゲストは3つの価値をすべて体験することができます。つまりショッピングの魅力とは、日本の魅力そのものなのです。


それを小売業の立場から語ると、次のように言い換えられます。



ショッピングは「観光資源」


「ショッピングツーリズム」は大都市や大規模店舗だけではなく、日本人が住むところであれば、全国どこでも取り組めるテーマです。ここでお伝えしたかったのは、ショッピングは非常に重要な観光資源そのものであるということ。観光においては単なるショッピングではなく、ショッピングツーリズムという概念で捉えることの重要性を十分に理解しておきましょう。


構成 井上麻理子

新津研一 Niitsu Kenichi


一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会 代表理事・事務局長

株式会社USPジャパン代表取締役社長

観光立国推進協議会委員

日本百貨店協会インバウンド推進委員会アドバイザー

2020年オリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応協議会委員 小売プロジェクトチーム議長


長野県佐久市生まれ。大学卒業後、伊勢丹(現・三越伊勢丹)入社。売り場経験を経て17年間店舗運営から新規事業開発などを担当。2012年に独立し、USPジャパンを設立。「ショッピングツーリズム」の観点を、インバウンド誘致事業に活かすべく活動している。


ジャパンショッピングツーリズム協会:https://jsto.or.jp/

USPジャパン:https://www.usp.co.jp/

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