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  • shikiko7

【第5回】受入環境整備の実践〜免税対応〜 / 講師 新津研一

第5回は「免税対応」をテーマに、訪日ゲストを受け入れるにあたっての環境整備についてお話ししていきます。日本の免税制度は世界の中でも早い・お得・簡単という魅力的なものです。この免税制度により、日本におけるショッピングツーリズムは飛躍的な成長を遂げました。あなたのお店も免税対応の整備をすることで、より多くの訪日ゲストが買い物を楽しみ、お店のさらなる魅力向上にもつながるでしょう。

日本の「免税制度」について


「免税制度」とは、外国人旅行者などを対象に、所定の商品の消費税などを免除して販売する制度のことです。海外の多くの国では、出国時に空港などの税関で手続きを行い、出国してから税金分が還付される「還付方式」の免税制度を採用しています。一方、日本では商品を購入する段階で免税手続きが可能な制度になっています。つまり、訪日ゲストは出国時に面倒な手続きをしなくても、購入したお店で簡単かつスムーズにお得な買い物ができるのです。


現在の日本の免税制度は、2014年10月に改正されたものです。それ以前から国内に免税制度はありましたが、免税対象となる商品分野は限られており、免税店の数も国内で数千店舗という状況でした。改正によって、これまでの一般物品に加え、化粧品や食品などの消耗品も免税対象となりました。

さらに免税店となるための、小売店の許可申請や免税処理の手続きも簡素化されました。この改正が起爆剤となり、訪日ゲストの旅行消費額は2014年から急増し、2011年と比較すると2018年には約5倍に増加(グラフ1)。

グラフ1:訪日外国人旅行者数・旅行消費額の推移


また、免税店も量販店や小売店などに拡充し、2019年4月1日時点での店舗数は5万店以上と年々増加傾向にあります(グラフ2)。このように、免税制度は日本のショッピングツーリズムの成長を牽引する重要な要素となっているのです。


グラフ2:免税店の推移


免税対応を整備するメリット


最近、街では「Japan Tax-free Shop」のポスターを見かけることが多くなってきました。日本の免税店には共通してこのロゴマークが掲げられており、訪日ゲストは一目瞭然でこのお店は8%もしくは10%安く買い物をできることがわかります。


免税店のロゴマーク


それだけではなく、「自分たちを歓迎してくれる」「言葉が通じるかもしれない」「クレジットカードが使えるだろう」といったことも、同時に思い浮かべるわけです。つまり、消費税分の割安感以上に、「訪日ゲスト歓迎」の意図を伝える効果も大きいのです。

さらに、化粧品、菓子、食品や日本酒・焼酎などは訪日ゲストのお土産としても大人気で、免税制度の改正以前から消費額のほぼ5割を占めていました。これらが免税対象となったことが大きなインパクトを与え、化粧品や食品などの消費額は堅調に増加しています(グラフ3)。


グラフ3:訪日外国人旅行者の買い物(お土産等)額の内訳


このような消費動向はあなたのお店や街にとってもメリットがあります。なぜなら、食品土産類や日本酒などは地方都市の特産品が多いため、その地域やお店を知ったり、足を運んだりするきっかけになります。ひいては、地方の活性化につながる効果も期待できるのです。


台湾人旅行者に人気の商品は?


日本の菓子に対する情報・知識が豊富な人が多く、お土産物としても人気を集めています。「白い恋人」「長崎カステラ」などの地域の名物菓子も広く知られており、大量に購入する姿がよく見られます。


菓子以外にも、海産物、米、椎茸、緑茶といった、その土地の特産品を土産として買い求める人もいます。リピーターほど「和服(着物)・民芸品」「服・かばん・靴」「書籍・絵葉書・CD・DVD」の購入率が高く、台湾では手に入りにくい日本のブランドも人気があります。


台湾人にとっては地方の小売店も魅力的な買い物スポットであり、免税対応を整備することで、より大きな誘客・経済効果が見込めるでしょう。

インバウンド大学@台湾では、台湾人の訪日旅行観についてインタビューしています。買物についてのリアルな言葉も並んでいますので、参考にしてください。


□台湾人の日本旅行観を探る「日本の台湾人」 □最新モノ・コトアンケート「台湾旅女子リアルトーク」


グラフ4 訪日回数別にみる費目別消費動向(台湾)


あなたのお店を「免税店」に


免税店になるには、店舗ごとに税務署の許可が必要です。免税制度の改正により、以前は厳格だった審査基準が緩和され、申請から許可までのプロセスもスムーズになっています。


①あなたが納税している地域の税務署に「輸出物品販売場許可申請書(一般型用)」を提出し、「輸出物品販売場」の許可を得る必要があります。その際には「販売場の見取図」「申請者の事業内容が分かるもの(会社案内、ホームページなど)」などの参考書類を併せて提出します。


②税務署では、「国税を滞納していないか」「店舗が外国人観光客の利用している、または利用が見込める場所か」「販売に必要な人員が配置されているか」などが審査されます。人員の配置については、多言語対応のパンフレット等(第3回参照)で代替することも認められています。


政府は免税店に関する問い合わせ窓口を設置し、制度の普及・啓発や、免税許可申請の促進、アドバイスなどに対応しています。2020年4月1日からはパスポートへの購入記録の貼付や割印など、紙による免税販売手続きを廃止し、電子化することで手続きがさらに簡略化されます(※)。今後も国をあげての免税対応の環境整備はますます進んでいくと考えられます。

免税販売手続きの電子化の流れ

※2021年9月30日まで、現行の紙による免税販売手続きも認められる

観光庁による免税店申請方法など


構成 井上麻理子


 

新津研一 Niitsu Kenichi

一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会 代表理事・事務局長

株式会社USPジャパン代表取締役社長

観光立国推進協議会委員

日本百貨店協会インバウンド推進委員会アドバイザー

2020年オリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応協議会委員 小売プロジェクトチーム議長

長長野県佐久市生まれ。大学卒業後、伊勢丹(現・三越伊勢丹)入社。売り場経験を経て17年間店舗運営から新規事業開発などを担当。2012年に独立し、USPジャパンを設立。「ショッピングツーリズム」の観点を、インバウンド誘致事業に活かすべく活動している。

ジャパンショッピングツーリズム協会:https://jsto.or.jp/

USPジャパン:https://www.usp.co.jp/


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