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【第6回】受入環境整備の実践〜通信〜 / 講師 新津研一

第6回は「通信」をテーマに、訪日ゲストの受入環境整備について解説します。訪日ゲストの多くは、旅行前に情報を得る手段としてインターネットを活用しています。さらに、滞在中はSNSなどで旅行中の様子を情報発信する手段としても用いています。通信環境の整備は訪日ゲストの利便性の向上はもちろん、あなたのお店や街の魅力を発信する効果も期待できるのです。

訪日ゲストにとって「Wi-Fiは当たり前」


外国人旅行者といえば、ガイドブックを片手に街を散策する光景がおなじみでした。ところが近年は、スマートフォンやタブレット端末を操作しながら目的地を探している姿が多く見られます。しかし当然のことながら、通信環境が整っていなければインターネットを使うことはできません。


台湾や韓国といったアジアの近隣諸国では、「フリー(無料)Wi-Fi」や、手軽にプリペイドで利用できる「公衆Wi-Fi」の普及が進んでいます。一方、日本ではWi-Fiの整備が推進されているものの、利用手続きの不便さや利用場所の制限などで使い勝手が良いとは言えない状況です。そのため、日本のWi-Fi環境に不満を持つ訪日ゲストは少なくありません。実際に訪日ゲストが滞在中に困ったことの上位に「Wi-Fi環境」が挙げられています(グラフ1)。


グラフ1:旅行中に困ったこと(複数回答)


訪日ゲストはホテルや飲食店などを選択する際、Wi-Fi環境の有無はもちろん、利用できる範囲までも比較しています。「Wi-Fiは当たり前」の訪日ゲストにとって、通信環境は旅程の決定権にまで影響を及ぼしているのです。

日本滞在中の情報源として、最もよく利用しているのが「インターネット」です(グラフ2)。旅先では「今」「ここで」必要な情報を得たいという要望が強くなります。リアルタイムで、母国語によって、知りたい情報を調べることができれば、旅行中の不安や心配が軽減され、よりスムーズに旅行が楽しめることでしょう。


グラフ2:日本滞在中に得た情報源で役に立ったもの(全国籍・地域、複数回答)


Wi-Fi環境の整備は、訪日ゲストの情報入手の利便性はもちろん、旅行満足度の向上にもつながる重要なポイントと言えます。


「情報発信」による集客効果


通信環境の整備は、訪日ゲストだけのメリットではありません。訪日ゲストがインターネットを使う目的は2つあり、1つが「情報入手」、もう1つが「今の行動のシェア」です。


訪日ゲストは旅行中の写真や動画をSNSやブログなどにアップして、「今、こんなお店にいるの」「素敵な商品をゲット!」といった情報を発信。魅力的なお店や街を楽しんでいる様子を自撮りして、ライブ配信で母国にいる友達や家族に伝えるケースも少なくありません。それに対して「私も行ってみたい」「お土産にお願い!」といったレスポンスが来ることもあります。


さらに、こういった「口コミ」は旅行前の情報収集でも重要視されており、役立った情報の上位を占めています(グラフ3)。つまり、訪日ゲストによる情報発信があなたのお店・商品・街のPRとなって、次の来客や売上へと繋がっているのです。このような集客効果、販売促進効果は無料Wi-Fiの設備がなければ実現できないことです。


グラフ3:日本への出発前に得た情報源で役に立ったもの(全国籍・地域、複数回答)


フリーWi-Fi生活が身近な台湾人


台湾人も訪日旅行における情報収集方法は、2017年のJNTO 調査によると、1位「インターネット検索」(90.3%)、 2位「SNS」(74.5%)、3位「ブログ」(61.1%)の順で、インターネットが中心であることは同じです。次にJNTO「訪日旅行誘致ハンドブック 2019」より、台湾人の 旅行情報の収集・申込方法についての分析を抜粋します。


■グーグルによる検索が一般的で、お気に入りのブロガーを 継続的に追跡することもあるが、自分の興味・関心に基づく検索結果に現れた複数のブログから、総合的に情報を収集することが多い。
■生の意見や体験談等を参考にすべく、旅行情報が多数投稿される掲示板サイトで情報を収集する人も多い。口コミに よる影響が大きい台湾では、口頭による口コミに加え、フェ イスブックや LINE(ライン)等で、友人や親戚など、身近な人の旅行体験に触れることが、旅行需要喚起の大きな 要因になっている。

旅行中の行動においても、行く先々で写真を撮り、ネットで公開してシェアすることが大好きな台湾人。そのため、訪日中に困ったこととして「無料Wi-Fi が通じにくい・場所が少ない」「通じてもLINEが禁止であったりして困る」などの不満が挙げられています。

台湾人の多くは自分のスマートフォンを持って海外旅行をします。そして、現地でインターネットを使うために、レンタルのポケットWi-Fiを持ち歩いたり、プリペイドのSIMカードを挿し直したりして使っている方もいます。しかし、これらの手段は支出や手間が増えるので、無料Wi-Fiのニーズも依然として高いのです(グラフ4)。


グラフ4:台湾人の海外でのインターネット利用状況


台湾では、行政機関への問い合わせ用として、観光地、MRT各駅、文化・教育施設、役所、病院などの公共の場に、中央行政機関によるフリーWi-Fi「iTaiwan」が全国約1万箇所に設置されています。これは台北市、台中市、桃園市など各自治体が持つフリーWi-Fiと提携しており同時に利用できます。

▲iTaiwanは主に室内に、地方自治体のフリーWi-Fiは夜市など人の集まる場所にも設置されている

また、大半の喫茶店ではフリーWi-Fiはあたりまえで、ノートパソコンを広げて時間を気にすることなく使用する人々の姿を多く目にします。


日常的には各自が契約した携帯会社でのWi-Fiを使用していますが、こうした環境に慣れている台湾人にとって、旅先で「いざ」というときにフリーWi-Fiがあるということは安心感にもつながります。


あなたのお店や街に「無料Wi-Fi」を


無料Wi-Fiの整備に対しては、飲食店や小売店に補助金を支給している自治体もあります。

例)

令和元年度 滋賀県無料Wi-Fi設置事業費補助金

富山市外国人向け設備導入奨励事業補助金

これまで述べてきたように、「無料でWi-Fiが利用できる」お店・街として認知されれば、訪日ゲストの集客だけではなく、満足度アップにもつながります。環境を整えるだけではなく、「うちの店では写真撮影OK」「シェアし放題ですよ」とアピールすることで、買い物がますます楽しくなり、あなたのお店の魅力はより高まるでしょう。


構成 井上麻理子


新津研一 Niitsu Kenichi

一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会 代表理事・事務局長

株式会社USPジャパン代表取締役社長

観光立国推進協議会委員

日本百貨店協会インバウンド推進委員会アドバイザー

2020年オリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応協議会委員 小売プロジェクトチーム議長

長長野県佐久市生まれ。大学卒業後、伊勢丹(現・三越伊勢丹)入社。売り場経験を経て17年間店舗運営から新規事業開発などを担当。2012年に独立し、USPジャパンを設立。「ショッピングツーリズム」の観点を、インバウンド誘致事業に活かすべく活動している。

ジャパンショッピングツーリズム協会:https://jsto.or.jp/

USPジャパン:https://www.usp.co.jp/


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