• NEXT T.C.

【第2回】マーケティングと商品施策の考え方 / 講師 新津研一

連載第1回では、「ショッピングツーリズムの基礎と重要性」について解説しました。第2回では、お客様(訪日ゲスト)を理解するためのマーケティング手法と、そのお客様にふさわしい商品施策を組み立てていくヒントについて解説します。


1.訪日ゲストを知る


マーケティングの起点は、お客様を知ること。あなたのお客様とは「訪日ゲスト」であり、訪日ゲストは「外国人」「旅行者」という2つの特性を持っています。その2つの視点から、収集した情報を基にお客様を正しく理解しましょう。


外国人としての特性を把握する


外国人としてのお客様を知ることは、インバウンド市場に取り組むうえで必ず押さえておくべき基本です 。なぜなら、国別の特性を知れば知るほど、「訪日ゲストは日本人と全く違う」ことを実感できるからです。「〇〇人はこういう人」という上から目線・思い込みが失敗の原因になります。その国の特性は、「定量情報」「定性情報」を用いて把握していくことをおすすめします。



これらを調べる際には、次のことに注意が必要です。


訪日ゲストが日本で使える金額はその時の為替レートによって変動するため、消費動向は円建てだけではなく、外貨建てでも見ることが大切。


相対比較、シェア、伸長率などは分母が変化しない場合は有効な指標となりますが、客数や消費額といった分母が変動しやすいインバウンド市場では実数での把握が重要です。


また、市場が未成熟のため、統計データを参考にする際は、正確性や整合性などを十分に吟味しましょう。


旅行者ならではの特性を把握する


訪日ゲストは「旅行者」でもあります。初めて日本を訪れる人、何度も外国や日本を旅している人など、その人の旅行経験によって興味や関心、旅行の目的は変わってきます。旅行形態や旅程に応じて、利用する宿泊先や移動手段なども異なってくるでしょう。


例えば、レンタカー移動のゲストであれば、2次交通に恵まれない地域も旅行可能な範囲となります。


このような旅行者としての特性も把握することで、あなたのお店や街と親和性の高い訪日ゲストを絞り込んだり、お客様によりふさわしい商品施策を考えたりするヒントになります。


旅行者の特性を把握するポイント


また、何よりも実際に訪日ゲストとふれあい、生の声からニーズや困りごとなどを把握することが大切です。街角で迷っているゲストに声をかけて手助けしたり、自ら海外旅行に行って実体験することでも、把握が可能です。


2.台湾人観光客を知る


では、本講義の対象である「台湾人観光客」について、前項で述べた2つの特性から理解していきましょう。


台湾人(外国人)としての特性


まずは、基本的な台湾の情報を見ていきます。


正式名称:中華民国・台湾 Republic of China,Taiwan

主要都市:台北、台中、高雄

人口:約2359万 (2018年12月)

面積:約3万6,000km²(九州よりやや小さい)

人種:民族、漢民族、先住民

宗教:仏教、道教、キリスト教、その他

言語:中国語、台湾語、客家語等

通貨:元(ニュー台湾ドル)

時差:1時間(台湾が正午のとき、日本は午後1時)


全人口の5人に1人が毎年日本へ!


台湾から外国への旅行者数は、2018年に1664万人と過去最高を記録。出国率は人口の70.5%に上り、外国旅行は台湾人の日常生活に定着しています。


旅行先では、2017年の統計によると中国(大陸)587万人、日本456万人、香港201万人(日帰り含む)の順となっています(出典:JNTO〈日本政府観光局〉、UNWTO〈国連世界観光機〉)。


2018年の訪日外国人旅行消費額

日本のインバウンド市場から見ると、台湾からの訪日客数は3位。一人当たりの消費単価は中国の5分の2ですが、注目すべきは下段の日本を訪れている人の割合です。台湾人観光客は全人口の20%、なんと5人に1人が毎年日本を訪れており、毎年10回以上来るという人もいます(グラフ1)。1回の買物単価が4万5000円であっても10回来れば45万円となり、年間で換算すると中国人観光客を圧倒するほどの水準になります。


グラフ1

台湾の世論調査(※交流協会調査2016)によると、最も好きな外国は「日本」。最も親しくすべき国・地域、最も海外旅行に行きたい国も「日本」 となっています。 その親日ぶりを示すように、訪日台湾人の9割が仕事ではない観光客で、その8割が2回以上日本を訪れたことがあるリピーターです。


インバウンド大学では、台湾人の日本旅行観についてのインタビューを掲載しています。こちらで、リアルな声を確かめてみてください。


インタビュー 観光客や旅行会社、台湾人のリアルな声

3.商品施策を組み立てる


お客様を理解したら、そのお客様にふさわしい「商品・地域資源」を準備し、喜んでくださるような環境を整え、おもてなしをする。併せて、お客様に響く情報を発信して集客をする。このように商品施策を組み立てていくには、訪日ゲストの視点で日本や自分の街・お店を見つめなおし、魅力を再確認・再発見することが第一歩となります。


あなたのお店・街の商品施策を立案するにあたり、日本のショッピングの魅力を再確認しておきましょう。


第1回のおさらい 【ショッピングを通じて得られる3つの価値】 ①接客を通じて、日本人の神秘的で不思議な「気質」にふれることができる ②商品を通じて、日本人が細部までこだわり抜いた「作品」に出会える。 ③商店街や商業施設を通じて、日本人の普段の「生活」にあるちょっとしたことを体験できる →ショッピングの魅力は日本の魅力そのもの

「独自性」「強み」を再発見する


続いて日本をあなたのお店・街に置き換え、他とは差別化された自分たちならではの「独自性」「強み」を考えてみましょう。と言うと“特別な商品”を想像しがちですが、訪日ゲストが魅力を感じる要素はモノだけでないことは、今までお伝えしてきた通りです。商品に込められた日本人のこだわりや取り巻く環境、つまりストーリーが重要なのです。


1.「日本人の当たり前」が魅力になる


日本人は世界一厳しい目を持っている消費者であり、全員が商品オタクと言われるくらい細部までこだわりを持っています。特別な高級品に限らず、日常的に手にする安価な商品であっても安心・安全・高品質が担保されています。そのような普段使いの商品が、日本人なら当たり前のように購入できるコンビニエンスストアや家電量販店なども、訪日ゲストから見れば観光名所であり、魅力的な買物スポットなのです。


2.「多様性」がリピーターを生み出す


日本には「四季」があり、シーズンによって店頭に並ぶ商品が違えば、地方ごとに農水畜産物や加工食品、民芸品や工業製品といった品ぞろえも異なります。何度も訪れたくなる多様性も日本のショッピングの魅力であり、あなたのお店や街でも、視野を広げればたくさんの多様性が見つかるはずです。


3.商品以外も強みになり得る


訪日ゲストにとって、渋谷のスクランブル交差点は観光名所であり、日本人にとって苦痛な満員電車でさえ面白いアクティビティだと言われています。畳や障子のある宿泊施設も人気があり、日本人の普段の生活シーンも訪日ゲストには魅力のひとつなのです。


あなたのお店や街の「独自性」「強み」は、自ら発見するだけではなく、訪日ゲストによって気づかされるケースもあります。インバウンド市場がもたらす意識や行動の変化は、地域全体の自信や誇り、元気を取り戻すきっかけにもなることでしょう。


構成 井上麻理子


新津研一 Niitsu Kenichi


一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会 代表理事・事務局長

株式会社USPジャパン代表取締役社長

観光立国推進協議会委員

日本百貨店協会インバウンド推進委員会アドバイザー

2020年オリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応協議会委員 小売プロジェクトチーム議長


長野県佐久市生まれ。大学卒業後、伊勢丹(現・三越伊勢丹)入社。売り場経験を経て17年間店舗運営から新規事業開発などを担当。2012年に独立し、USPジャパンを設立。「ショッピングツーリズム」の観点を、インバウンド誘致事業に活かすべく活動している。

ジャパンショッピングツーリズム協会:https://jsto.or.jp/

USPジャパン:https://www.usp.co.jp/

ネクスト・ツーリズム・コンサルティング

華旭顧問股份有限公司

台灣台北市中山區建國北路一段90號10F-2

Email:info@jinns.com.tw

Tel:+886-2-2515-2999 内線252, 253(日本語専用)

Fax:+886-2-2516-0755

Copyright © 2020 Next Tourism Consulting Co.,Ltd All Rights Reserved.