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【第3回】インバウンドデータを広告配信に活用する / 講師 篠原好孝

観光関連の事業に携わる方に向けて、第1回では「データの集め方」、第2回は「集めたデータを使える状態にする方法」について解説しました。今回は、いよいよ「インバウンドデータの使い方」について説明していきます。

Q.インバウンドデータの具体的な使い方を教えてください。


観光業界では、インバウンドデータに大きく2つの使い道があると考えられます。ひとつは「コンテンツの制作」。集めたデータから、多くの人が求めているニーズを探り出し、期待に沿うものを作り上げるということです。ただし、日本には外国人観光客を惹きつける観光スポットや料理、エンタテインメントが十分にあります。新しく観光コンテンツを作るよりも、まずは今あるコンテンツをきっちりと発信していくことが大切です。そのため、インバウンドデータのもうひとつの使い道である「広告配信」がカギになります。

インバウンドデータの2つの活用法


観光関係の事業者の方々は、「チラシやパンフレットの配布、テレビCM、雑誌広告など、様々なメディアに広告を出している。もう十分では?」と思われるかもしれません。でも、それは本当に効果的なのでしょうか?


古くからある既存メディアへの広告配信は、経費がかさみます。印刷代や広告料は結構な金額になります。それに、広告を出したからといって、その広告がどれだけの効果を得られたのかは検証できません。例えば、駅前で旅行のチラシを配布したとします。チラシを受け取った人の何%が実際に旅行をしたのかは把握が難しいものです。


インバウンドデータ活用による スマートフォンへの広告配信の流れ


Q.広告はどこに出せばいいのでしょうか?


現在、世界では広告配信といえば「スマホ」が常識になっています。前回もお話しましたが、アジア各国のスマートフォン保有率は90%を超えています。台湾は日本以上に“スマホの国”で、台北での保有率は99%です。大多数が所持しているスマホを広告配信に使わない手はありません。


みなさん、ご存知だと思いますが、スマホを所有していると画面に様々な広告が出てきます。ただし、自分が興味のない広告が出てきてもクリックはしないでしょう。私もそうですが、さらっと無視してしまいます。ですから、その広告を必要としている人に目がけて広告を打つことが重要です。


この手法はオーディエンスターゲティングと呼ばれています。例えば、台湾人に向けて観光誘致の広告を出す場合に、日本に興味がない人には配信しない。日本への旅行を考えている人にだけ配信する。インバウンドデータを活用することで、こうした区分けが可能になります。


さらに細かなシチュエーションで、広告配信の有無を設定することも可能です。例えば「台湾から日本に旅行に来て、今、東京に滞在している。だが、これからの具体的な行き先は決めていない」という人。こうした人に目がけて「東北へ日帰り旅行はいかがですか?」という広告を配信する。やみくもに広告を出すよりも、高い効果が期待できます。


特定エリアに訪れたユーザーへの訴求のためのデータ活用例

インバウンドデータでは行動履歴も把握できます。同じく東京に滞在している台湾人でも、東北旅行を終えて帰ってきたばかりの人に広告を出しても意味がありません。様々な要素を複合的に見て、広告を打つユーザー層を選ばなければならないのです。


このようにターゲットを絞ることで、その広告を見てもらえる確率は高まり、配信の数が絞れるため無駄な経費も節約できます。


Q.今までの広告展開をやめて、スマホのみに絞ったほうがいいということですか?


いいえ、スマホのデジタル広告配信が100%正解というわけではありません。私は「デジタルとオフラインが融合したハイブリッド型の展開」がいいと思います。


デジタル広告はオーディエンスターゲティングに優れている、検証性が高く結果が具体的な数値で見えるなど、大きなメリットがあります。ただし、デジタルという性質上、無機質に感じられることも多いと思います。スマホの広告よりも、旅行会社の人に手渡しでもらったチラシにあたたかみを感じるという人もいます。


ハイブリッド型の広告配信の例として、2017年10月27~30日に台北で行われたITF(台北国際旅展)を紹介します。ITFとは台湾最大の旅行博覧会で、会場内に世界各国がブースを出展し観光PRを行います。来場者は展示物を見たり、スタッフから説明を受けたりと、デジタルではなくオフラインによって情報を収集します。まさに人の力を感じさせるイベントといえます。


2017年のITFではそこにデジタルの力を導入しました。ITFに訪れた人のうち、「どれだけの人が実際に日本に出かけたのか」、来場後の各個人のデータをたどることで3684人が来日したという情報が得られました。


2017年のITF(台北国際旅展)参加者数に対してのデータ捕捉数と、 その後2カ月以内に日本を訪れた台湾人の数


さらにその日本へ旅行した3684人は、ITF開催から平均2カ月後に旅行に出かけています。デジタルの力で、そうした平均値もつかむことができるのです。


2017年ITF後の台湾人の訪日タイミング


ITFは11月の開催ですから、「次回のITFでは、開催日から2か月後の1~2月の広告を多くしよう」といったアイデアが生まれます。日本にとっても、台湾にとっても、デジタルマーケティングは大きなメリットがあるのです。


従来のオフラインベースの広告展開から、一気にデジタルへと切り替えることは難しいです。今までの手法に愛着をもつ人も多いでしょうし、広告を制作してきたスタッフやメディアとの付き合いなど、さまざまな事情があるはずです。ただし、世界的に見ると広告配信の主役はデジタルへと移り変わっています。デジタルへの意識を高めていくことは、不可欠なことだと思います。


構成 川岸 徹

篠原好孝 Shinohara Yoshitaka

Vpon JAPAN株式会社 代表取締役社長

1979年、東京都生まれ。学習院大学経済学部経営学科卒業後、LVMH Louis Vuitton Japanにてセールス&マーケティングに従事。2006年、株式会社Simplenaを創業し、代表取締役就任。業務改善コンサルティング、中小企業向けのWEBマーケティング支援事業を展開する。同時にBecome Japanにて事業開発、InMobi Japanにてスマートフォン広告の事業開発を統括。’14年8月にVpon JAPAN株式会社の立ち上げ代表取締役社長に就任。ビッグデータを駆使したインバウンドデジタルマーケティングソリューションを手掛ける。「日本から世界を幸せにするヒト・モノ・コトを創出しニッポンと世界を繋ぐ」べく、インバウンド領域を中心に事業を展開している。また、目白少年サッカークラブコーチとしても活動している。

Vpon:https://www.vpon.com/jp/


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